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psychology

続けるだけでは意味がない。研究が示した「成長できない人の条件」

2025.05.24 13:00:14 Saturday

「継続は力なり」「三年」など、何事時間かけ取りば、少しずつ上達ていくという考えは、たちの中に幅広く浸透しています。

自分が何らかの仕事を他人に依頼する場合でも、経験豊富な人にお願いしたいと考えるのは自然なことです。

しかし、詳細に調査を行うと、業種によっては「長年って上達しない」ケース報告ています。

この記事では、「続けるほど上手なるはず」という直感逆らう、ちょっとショッキング事例紹介し、そこから見えくる“本当上達カギ”ます。

Do psychotherapists improve with time and experience? Do psychotherapists improve with time and experience? https://div12.org/do-psychotherapists-improve-with-time-and-experience/
Do psychotherapists improve with time and experience? A longitudinal analysis of outcomes in a clinical setting https://doi.org/10.1037/cou0000131 The Impact of Individual Teachers on Student Achievement: Evidence from Panel Data http://dx.doi.org/10.1257/0002828041302244

心理療法教師は経験年数が能力ない

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心理療法分野では、長い間経験豊富心理療法ほうが効果的な治療ができると信じられていました

こうした職業では、様々なクライアントと接し、多く症例扱うこと技法れ、判断力が高まるというのは当たり前のことのように思えます

しかし、実際臨床現場では、ある心理療法クライアント改善が、心理療法比べ一貫高いず、「優秀心理療法か」というのが曖昧でした

またいくつかの小規模研究では、経験年数治療効果に一貫した結果おらず、経験豊富なベテラン心理療法士ほど効果的な治療が出来る、という考えについて疑問がでていました。

そこでウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin–Madison)の心理学者サイモン・B・ゴールドバーグ(Simon B. Goldberg)博士研究チームは、2016年に心理療法経験積むこと本当に効果治療成長いるか?」を検証する調査を行ったのです

彼らは、アメリカ国内5医療施設から6,591患者170心理療法士を対象に治療前後患者心理症状どれだけ改善したを「d値(Cohen’s d)」という統計指標分析しました。

すると驚いたことに心理療法士は経験年数増えも、患者改善効果ほとんど向上していなかったのですむしろ、ごくわずか効果下がる傾向すらした。

なぜそのようなことが起きるのでしょうか?

ここには、心理療法士という職業が、仕事の成果に対する正確なフィードバックを得づらい点にあると考えられます。

今回は研究のためにクライアントの治療前後の心理状態が詳細に調査されましたが、通常臨床現場ではこうした測定は行いません

心理療法守秘義務あるため、セッション内容他者評価することは通常しく、患者状態本人主観申告ざるせん。結果として、心理療法自身自分仕事どれだけ効果たか把握できず外部からフィードバック受けにくい構造になってしまうのです

これは何も心理療法士だけに起きる問題ではありません。

別の研究では教育現場でも、よう課題があることが報告されています

ハーバード大学経済学者ジョナ・ロックオフは、2004年の研究で、ニュージャージー小学校教師1万人生徒標準化テストデータて、教師経験年数生徒成績向上関係調査しました。

この研究では、教師ごとに「その年度担当した生徒テストスコア1年間どれだけ伸びたか」測定し、その「伸び」教師経験年数どう関与いるか統計分析しました

結果として、教師効果(生徒成績向上貢献度)1〜3急速伸びるものの、それ以降ほぼ横ばいなることした。つまり、初期年間指導技術向上するものの、継続経験だけでは、それ以上上達効果増加期待できないというです。

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しかも、この研究は「教師によって生徒成績伸び明確ある」こと示しています。ある教師A1年間平均+10成績向上引き出せるに対し、教師Bは+15というように、効果ばらつきあります。

そして重要は、経験重ねからといって、その縮まるないというです。つまり、教師A5年、10継続教えも、必ずしも教師B水準近づくわけではないということです。

教師場合、生徒テスト結果という一見明確成果フィードバックられるよう見えます。しかし、実際その成績指導によるものか、生徒個別の事情によるもの判別することはしく、教師自身が自分教えか、問題把握する容易ではありません。

また、授業他者ない閉鎖空間われること多く、客観フィードバック受ける機会ています。

そのため教師は学び直しや改善への意欲が薄れる傾向も指摘されており、経験重ねるほど自己流に走りやすくなると考えられるのです。

このように、フィードバックあっも、それ活かす仕組み環境ってないことが、教師成長妨げる要因一つっているようです。

私たちは、経験の長い人を無条件に信頼してしまう傾向がありますが、これらの研究報告は、「経験=上達という単純な図式で能力を捉えるべきではないことを警告しています。

次ページ経験が重要な職業にも、思わぬ落とし穴がある

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