「ため息」には作業効率を高める効果がある?
研究チームは今回、電子機器での読書が読解力を低下させる”原因”を探るべく、調査を開始。
その中で、認知機能やパフォーマンスと関連する2つの要因:「視覚環境」と「呼吸パターン」に着目しました。
紙媒体と電子スクリーンの違いから「視覚環境」は納得できますが、「呼吸パターン」に焦点を当てた理由について、研究主任の本間元康氏はこう説明します。
「研究室での作業中、隣の席の女性が頻繁にため息をついていたので、気になって先行研究に当たってみました。
すると、ため息は社会的コミュニケーションにマイナスの印象を与える一方で、認知機能にはプラスの影響を与えることがわかったのです」
つまり、ため息は、意識的にせよ無意識的にせよ、作業効率を高める可能性があるのです。
「紙」と「スマホ」で読解力テスト
そこでチームは、34名の大学生(平均年齢20.8歳、女性20名)に参加してもらい、スマホおよび紙媒体の2パターンでテキストを読む実験を行いました。
テキストには、村上春樹氏の小説『ノルウェーの森』と『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』から抜粋し、スマホと紙で同じ文章を読むことがないようにしています。
読書中は、ヘッドバンド(NIRS:機能的近赤外分光法)で前頭前野の活動を記録し、また呼吸パターンを測定するため、口と鼻を覆うエアロモニターを装着してもらいました。
その後、テキストの内容に関連した10の質問をし、読解力をテストします。
(※文字サイズなどは、紙とスマホでまったく同じに設定してある)
結果、テキストの違いに関係なく、紙媒体で読んだ方が、スマホに比べて、全体的に読解力のスコアが高いことが示されました。
これは、「電子機器での読書が理解力を妨げる」という先行研究と一致します。
それから、紙とスマホによって、学生の呼吸パターンに違いが認められました。
紙で読んだときの方が、スマホに比べて、より多くのため息が誘発されていたのです。
この場合のため息は、「1呼吸の深さが通常の呼吸の2倍になるもの」と定義されています。
さらに、どちらの媒体でも、読書中に前頭前野の活動が高まっていましたが、興味深いことに、スマホで読むときの方がより活発になっていました。
しかも、このスマホ読書による前頭前野の過活動は、「ため息の回数の減少」と「読解力のスコア低下」につながっていたのです。
では、スマホでも快適に読書するには、どうすれば良いのでしょうか?