高高度の風を捉えて効率よく発電できる「凧あげ」発電機
風力発電は費用対効果が高く、環境にやさしいエネルギー源として注目されてきました。
ただし従来の風力発電機のほとんどは「風車」型です。
太い支柱を地面から延ばし、大きなブレードを回転させなければいけません。
当然、設置できる場所は限られており、多くの労力や費用が必要でした。
また支柱をそこまで高く伸ばせないため、利用できるのは地面の近くを流れる風に限られています。
しかし風速は、地面に近ければ近いほど、地形や建物の影響(摩擦)を受けて弱まります。
つまり従来の風力発電機は、「地球が生み出す風」のうち、一番弱い部分しか利用できていなかったのです。
ではもっと高い位置の風を利用できるでしょうか?
SkySails Power社は、凧あげの要領で高高度の風を捉える新しい風力発電機を開発しました。
空中を舞い続ける凧は、強風を捉え続けます。
実際に凧あげをすると、凧糸を握っている手はかなり強い力で引っ張られますね。
新しい発電機は、この引っ張る力を電力に変換しているのです。
従来の発電機のように支柱の高さに制限されることがないため、高度400mまでの「高高度の風」を利用できます。
SkySails Power社は高高度の風を利用できるメリットについて次のように説明しています。
「高高度の風速は、地面付近の2倍から3倍にまで大きくなります。
風力は風速の3乗として計算できるため、風速2倍は風力8倍、風速3倍は風力27倍として考えられます」
少しでも高い位置の風を捉えることで、発電効率を飛躍的に向上させられるのです。
現在、この新しい発電機の定格出力(一定の条件での出力最大値)は200kWです。
地上に設置した従来の「風車型」発電機1基の定格出力が1500kW以上あることを考えると、発電量はかなり少ないように思えますね。
しかしこれは最大値の比較です。実際の発電量は風の強さや風が吹く頻度に大きく影響されます。
SkySails Power社は、この「凧あげ」発電機が、風の弱い地域でも高高度の風を利用することで、安定して発電し続けられると主張しています。
風が強い地域では従来の発電機が活躍しますが、新しい発電機の強みは、場所を選ばず簡単に設置できる点にあるのです。
また新システムが、土台と軽量の凧、耐久性のある特殊なワイヤーだけで成り立っている点も、この強みを後押ししています。
いくつかの疑問はまだ残ったままですが、風力発電のアイデアとしては画期的だと言えます。
変革をもたらす「凧あげ」発電の今後に、期待したいですね。