前頭前野の損傷で「感情の判断」ができなくなる
「自分の感情について考え、判断を下す」というのは、少々わかりにくい表現かもしれません。
しかし本研究主任のアジャイ・サトプート(Ajay Satpute)氏によれば、「私たちは常に感情に対して、何らかの評価や判断を下している」といいます。
例えば、お葬式に出席してなぜか「笑い」がこみ上げてくると、その感情はその場にそぐわない「悪いもの」だと判断します。
あるいは、無礼な人に対して「怒り」を感じるとき、「ここで怒ってはいけない」と自分に言い聞かせることで、暴言を吐くのを抑えられるでしょう。
このように感情に対する評価や判断は、社会への協調的な参入と、自分の間違った行動の抑制にとって有効なのです。
もしこれができずに、お葬式でゲラゲラ笑ってしまうと、すぐさま爪弾きにされるでしょう。
そしてサトプート氏のチームは今回の研究で、この感情の評価・判断を担っている脳領域を特定したと主張します。
25名の被験者を募り、さまざまな感情について判断する際の脳活動をfMRI(機能的核磁気共鳴法)で測定。
その結果、被験者が自らの感情を評価・判断している際に、内側前頭前野(mPFC)、腹内側前頭前野(vmPFC)、楔前部(けつぜんぶ、大脳の内側面にある脳回のひとつ)が最も活発に活動していることが判明しました。
これは前頭前野が判断・評価・倫理的思考にとって重要であることを示す、これまでの研究を支持するものです。
さらに前頭前野は先のゲージが事故で損傷した脳領域と一致します。
つまりゲージは、自身の感情をうまく評価・判断する能力を失ったことで、社会的シチュエーションと感情表現がちぐはぐになり、性格がガラリと変わってしまったのかもしれません。
研究チームいわく、感情評価に注目した脳研究は、おそらく今回が初めてとのこと。
まだ初歩的な研究に過ぎませんが、今後の進展次第では、この知見が感情コントロールの訓練に役立つとも期待されています。
例えば、どうしても社会的シチュエーションに反した感情表現をしてしまう人々にとって、大きな助けとなるかもしれません。
※この記事は2022年6月公開のものを再編集しています。
うっおえぇぇ
なぜ 脳出血しなかったのか不思議