鉄の棒が頭を貫通して性格が激変してしまった男性
1848年9月、アメリカの鉄道建築技術者の職長だったフィニアス・ゲージ(Phineas Gage、1823〜1860)は、路盤を建設するための発破作業をしていました。
岩に深く穴を掘り、火薬・ヒューズ・砂を入れて、鉄の棒で突き固めるという作業です。
ところが砂を入れてなかったためか、突き棒が岩にぶつかって火花を発し、火薬が爆発しました。
その瞬間、長さ43インチ(約109センチ)の鉄の棒がゲージの左頬を貫通し、脳を通って頭蓋骨の上部から突き抜けていったのです。
ゲージの頭を突き抜けた鉄の棒は25メートルほど先まで飛んで落ちたといいます。
まさに大惨事。
ところが驚くべきことに、ゲージは数分もせぬ内に話し始め、ほとんど人の手も借りずに、自宅までの1.2キロを馬車に乗って帰っていったというのです。
その後、医師による処置を受けたゲージは左目の視力を失ったものの、知力や認知機能、運動能力はそのまま維持しました。
ところが、家族や友人はゲージの大きな変化に気づきました。
彼の性格、とくに感情表現がガラリと変わってしまったというのです。
友人たちは「もはや以前のゲージではなかった」と話し、主治医は「悪態をつくことが多くなり、仲間に対する敬意もほとんどなくなった」と書き記しています。
結局、ゲージは現場監督の職を失い、事故から12年後の1860年、36歳の若さで亡くなっています。
なぜゲージは性格が変わってしまったか、その答えが今回の研究に隠されているかもしれません。