労働時間を減らしても、会社の生産力は落ちない
今回のプログラムについて、主任研究員の一人で、ボストンカレッジの社会経済学者であるジュリエット・ショア(Juliet Schor)氏は、こう話します。
「この試験は、休日を1日増やした場合に、仕事と生活の満足度、健康、睡眠、ストレス、エネルギー消費など、さまざまな側面から従業員にいかなる影響を与えるかを調査するものです」
同様の試験は、すでに国際的に多く実施されており、これまでで最大のものは、約2500人の従業員が参加したアイスランドでの試験です。
それによると、労働時間の短縮は、従業員にとって多くの心理的メリットがありながら、生産性の低下には繋がらなかったと報告されています。
研究者は「従業員の多くが労働時間を減らすことで、気分が良くなり、活気が出て、ストレスが減り、結果、運動や友人関係、趣味など、ほかの活動に多くのエネルギーを使えるようになった」と述べています。
そして、この心身へのポジティブな影響が、仕事の生産性への向上にも繋がっていたという。
つまり、週4日労働は、より少ない時間で働きながら、会社の生産力は落とさず、通常と同じ収入を得られる、非常に効果的な労働システムと考えられるのです。
さらに理論的には、労働時間を短縮することで、二酸化炭素の排出量も削減できる可能性があるという研究結果も出ています。
ショア氏は「週4日労働は、従業員・企業・環境の3者に利益をもたらす政策と見られる」と指摘します。
今回のプログラムを主導する4 Day Week Globalは、2018年に、ニュージーランドの信託会社Perpetual Guardianでの週4日労働の試験が成功し、その効果を高く評価した主催者が、この政策を世界的に拡大・恒久化したいとの思いから創設されました。
Perpetual GuardianのCEO、アンドリュー・バーンズ(Andrew Barnes)氏は当時、「私たちが目の当たりにしたのは、スタッフの満足度と仕事への取り組みが大幅に向上し、『この会社で働き続けたい』というスタッフが増加したこと。それでいて、会社の生産力がまったく落ちなかったことです」と述べています。
本プログラムは現在、イギリスの他にオーストラリアとニュージーランドでも行われており、また最近、アメリカとカナダが試験への参加を表明しました。
今回の試験の結果次第では、週4日労働に賛同する企業が世界的に増加すると期待されます。
また、プログラムに参加している英ハイテク企業・センサット(Sensat)の人材部門責任者、パディ・ランブロス(Paddy Lambros)氏は、次のように語っています。
「週4日制の導入により、会社への就職応募が増え、好感度が上がり、より多様な人材を採用できるようになりました。
こうしたことを踏まえると、週4日制を他の企業より早く採用することには、予想以上に大きな利点があると考えられます」
働きすぎで「過労死」する人も出ている日本の労働環境も、週4日制の導入で緩和されるといいですね。