脳細胞に咲く「毒の花」はアミロイドベータを蓄積させる
花の正体はいったい何なのか?
謎を解明するため研究者たちは早速、マウスの脳細胞に咲く花の調査にとりかかりました。
すると花は老廃物を大量に溜め込んだ細胞の「ゴミ回収車(オートファゴソーム)」であることが判明します。
通常、ゴミ回収車(オートファゴソーム)が老廃物をある程度まで溜め込むと、内部に酸性液を含む分解屋(リソソーム)と結合して、内部の老廃物の分解処理が行われます。
しかしアルツハイマー病のマウスたちの場合、分解屋(リソソーム)内部の酸性度が低下しており、何個結合してもゴミ収集車(オートファゴソーム)内部の老廃物の分解ができなくなっていました。
花のようにみえる構造は、ゴミ回収車(オートファゴソーム)に分解屋(リソソーム)が無意味な融合を繰り返して肥大した、巨大な液胞だったのです。
そのため研究者たちは、アルツハイマー病になったマウスたちの脳では、脳細胞のゴミ処理システムが機能しなくなっていると考えました。
細胞のゴミ処理システムが麻痺した場合、細胞は機能不全に陥り、死に至ります。
研究では損傷が酷く死にかけている脳細胞では、巨大な花が核の周りに形成されている様子が示されています。
また肥大化した液胞の内部を調べると、毒性のあるアミロイドベータが徐々に蓄積されていることが判明しました。
つまり花はアミロイドベータの供給源にもなっていたのです。
研究者たちは、この奇妙な構造を「PANTHOS」と名付けています。
これはギリシア語で「花」を意味する「アントス(Anthos)」から作った造語で、「毒のある花」を意味しているようです。
(アントスは特に黄色いセキレイを指すと言われる。「PANTHOS」の読みはパントスになると思われるが、公式な日本語読みはまだ示されていない)
まとめると、アルツハイマー病では
・脳細胞内部の分解屋(リソソーム)の酸性度の喪失が先行して起こる
・酸性度の喪失が「毒の花」を形成させる
・最後に「毒の花」がアミロイドベータを蓄積させる
という経過を経ていた可能性が示されたのです。