免疫抑制なしに臓器移植を子供に行うことに成功!
臓器移植にとって拒絶反応は常につきまとう問題です。
他人の臓器は体にとって異物として認識されるため、臓器移植を受けた人々は、自分の免疫システムが移植された臓器を攻撃しないように、生涯にわたって免疫抑制剤を飲み続けなければなりません。
しかし免疫能力を抑制すると、感染症にかかりやすくなるだけでなく、体内で発生したがん細胞を抹殺する能力も衰えてしまい、がんにもなりやすくなってしまいます。
そこで近年になって、臓器提供者から臓器に加えて免疫細胞の元となる骨髄幹細胞も同時に移植する「二重移植」の試みが行われるようになってきました。
患者の免疫システムを臓器提供者の免疫システムに上書きしてしまうことができれば、理論的には、移植臓器への攻撃が行われなくなります。
しかしこの方法にも本質的な問題がありました。
患者の免疫システムを臓器提供者(他人)の免疫システムに上書きしてしまうと、今度は患者の正常な臓器が、移植された他人の免疫システムから攻撃されるようになってしまうのです。
そのため「完全な免疫力を維持」しつつ、移植された免疫システムによる「拒絶反応を完全に抑える」という2つを同時に成し遂げる方法は「聖杯」とみなされてきました。
(※多くの者が探し求めていても容易にみつからないこと、みつかれば多大な恩恵が得られることから「聖杯」と表現されています)
そこで今回、スタンフォード大学の研究者たちは「聖杯」を得るための第一段階として、遺伝子疾患を抱えた3人の子供(6歳・4歳・8歳)たちに対して、実験的な方法による「二重移植」を行うことにしました。
以前の研究では、同様の遺伝子疾患を持つ患者たちに対して免疫システムの移植を行ったものの、5人中4人が死亡するという痛ましい結果になりました。
(※この移植を受けた子どもたちは免疫系の疾患により、免疫システムの移植を受けなければ予後が厳しい状態でした。死因は移植された免疫システムの誤作動や免疫システムの衰弱による感染症でした)
ですが手法を改善した今回は違いました。
3人の子供たちは二重の移植後も長期間(22~34カ月)、免疫抑制剤を用いることなしに、健康に過ごせていることが確認できたのです。
また試験では重篤な副作用も、確認されていないとのこと。
しかし、なぜ子供たちの体は、移植された免疫システムから攻撃されなかったのでしょうか?