後輪を2つに割っても、ちゃんと走行できる?
車輪の歴史は非常に古いです。
紀元前3500年頃に、メソポタミア地方(現イラク)で、シュメール人が木製の円盤に回転軸を挿し込んだものが「車輪」の始まりとされています。
車輪は人類にとって革命的な発明となり、戦争や交通、農業、工業など、あらゆる分野に多大なる影響を及ぼしました。
その後、19世紀になると、ゴムの内部に気体を封入し、その張力で車体を支えることのできる「タイヤ」が開発されます。
ちなみに、空気入りタイヤを世界で初めて実用化したのは、英ゴム・タイヤブランド「ダンロップ」の創業者、ジョン・ボイド・ダンロップ(1840〜1921)です。
空気入りタイヤは、今日の自動車や自転車に使われていますが、ゴルディエフ氏は「ただのタイヤでは物足りない」と考えました。
氏は、”車輪の再発明(Reinventing the wheel)”という目標を掲げ、先の「0.5 + 0.5 = 1」のアイデアを思いつきます。
考えてみれば、路上を走るタイヤは常に一部分しか接地していません。
タイヤ半周分が接地する間、もう半周は地面から離れています。
ということは、半周分の接地に次いで、もう半周分がすぐに接地すれば、タイヤを半分に割っても自転車は走るのではないか?
ゴルディエフ氏はそう考え、後輪を半分に割った自転車の製作を開始しました。
まずもって、後輪を半分に割ってしまうため、通常の空気入りタイヤは使えません。(前輪はそのまま空気入りタイヤを使用)
そこでゴルディエフ氏は、空気を使わない「エアレスタイヤ」を採用しました。
エアレスタイヤは、気体の代わりにゴムまたは樹脂製の支柱によって張力を作ることで、封入気体と同じバネを生み出します。
気体を使わないのでパンクの心配がありませんし、もし釘やガラスを踏んで破損しても、タイヤが機能不全に陥ることもありません。
タイヤの次は、半分に割った後輪を前後にセットするため、自転車のボディを延長します。
自転車のフレームをカットして、寸歩を合わせたパイプを用意し、角度などを計算してから、車体に溶接します。
パイプは元のボディと同じ赤色に着色し、2つの半輪タイヤを装着したら、完成です。
こうして、見たこともないユニークな自転車が仕上がりました。
走行もご覧の通り問題なく、段差にも対応して走ることができます。
しかし、プロのエンジニアからすると、この自転車を日常的に使用するのは不可能とのことです。
まず、ハンドリングの面で、普通の自転車よりもバランス感覚や安定した操縦の維持に難があるといいます。
また、タイヤが半分になっていることで、地面に落ちているヒモや障害物に引っかかる危険性も無視できません。
さらに、長距離を走ったり、コーナリングをする際に、おそらく、半分に割った2つの後輪の移動距離が違ってくるため、どちらかが接地していて、どちらかが地面から離れている状態をずっとは保てません。
言い換えれば、両輪とも接地しているか、離れているタイミングが来るのです。
そうなると、自転車はもう走れません。
非常にユニークな発明ですが、乗り心地や安全面を考慮すると、”未来型の自転車”にはならないようですね。
ただ、友人をビックリさせる小ネタとしては使えそうです。
製作過程の全貌はこちらからご覧いただけます。