罰を下すことで「報酬」が出ると罰する意欲が半減すると判明!
私たち人間はしばしば「道徳的正義」のために他者に対して罰を下します。
いたずらをした子供、不正を犯した政治家、空き缶のポイ捨てなど、私たちは可能な範囲内で、自らの正義をもとに罰を下そうとします。
最新の研究では「罰を下す」という決断は8カ月の乳児にも観察されることが確認されており「罰」は人間にとって本能的な行為である可能性が示されています。
しかし正義は人の数だけ存在します。
以前の研究では、暴力事件を起こした犯罪者たちにインタビューを行ったところ、ほとんどの犯罪者たちが自分なりの正義にもとづいて暴力を行使していたことが明らかになっています。
例えば、侮辱を償わせるための暴行や、ギャングが縄張りを維持するための抗争は、法律に反していても、当人にたちにとっては「正義」と認識されていました。
そのため暴行事件などの犯罪を抑止するには、逆説的に「正義のために罰」という概念を抑止することが重要となっています。
そこで今回、カリフォルニア大学の研究者たちは約1500人の被験者たちに対していくつかの実験を行い「正義のための罰」を抑えるための効率的な方法を探しました。
すると意外なことに「罰を下すこと」に対して「金銭的な報酬」を与えることが、大きな罰の抑止効果になることが判明しました。
実験においては金銭の授受をともなうリアルな金融ゲームが舞台として設置され、特定の1人が自らの道徳的正義にもとづいて、不正行為を行ったプレーヤーを罰することが許可されました。
しかし興味深いことに、罰を下すことに対して報酬(金銭)が与えられるというルールが加わると、罰を下す意欲が半減することが判明したのです。
罰を下すことで不正が減り報酬までもらえるならば、より熱心に罰を下すようになってもいいはずです。
なのになぜ、報酬は人々から罰する意欲を奪ったのでしょうか?