時速100km以上のハイスピード「ドローンレース」
ドローンレースの中でも特に難易度が高いのが、「FPV(一人称視点)ドローンレース」です。
この競技では、ドローンレーサーがヘッドセットを装着して、ドローン前面のカメラから得られる映像だけを頼りに操縦します。
つまりレーサーは、まるで小型ドローンに搭乗しているかのような視点でレースに挑むのです。
そのため、このレースはいわゆるラジコンレースでありながら、操縦者には自動車「F1」レースのレーサーと同じようなセンスが求められます。
しかもFPVドローンレースでは、時速100~150kmものポテンシャルをもつレース用ドローンを使って、3次元構造の狭くて複雑なコースを周回しなければいけません。
自動車レース以上に判断力や精密な操作、超人的な瞬発力が求められるのです。
下の動画ではレーサー視点で試合を見ることができますが、その難易度の高さがうかがえます。
ではこのような不確定要素が多く、瞬間的な判断を連続して要求するレースをロボットがこなすことはできるのでしょうか?
2021年7月、チューリッヒ大学の開発グループは、「私たちが開発した自律型ドローンが、世界最高峰のドローンレーサー2人に勝利した」と報告しました。
訓練された人間よりも、ロボットの方がうまくドローンを操縦できるのです。
しかし、このレースの条件には人間側にとっては完全に公正とは言えない要素が含まれていました。
2021年のドローンレースで使用された自律型ドローンは、外部システムからの支援を受けて動作していたのです。
これは、ドローンの位置情報をリアルタイムで提供するモーションキャプチャーシステムや、外部のコンピュータによる情報の処理・送信のサポートなどを含みます。
つまりこの自律型ドローンは、ドローン本体から得られた一人称視点の映像情報だけでなく、他のリアルタイムな外部情報も参照していたのです。
これでは一人称視点の映像だけを頼りに操縦する人間のレーサーと、同じ条件で勝負したとは確かに言えない気がします。
ゲーム好きの人なら、「チートだ!」と言いたくなってしまうかもしれません。
そこで、公正な条件のもと、改めて人間と自立型ドローンの勝負が行われることになりました。