大人に見られる「ADHD」の特徴とは
ADHDとは、集中力が持続しない「不注意」、落ち着きがない「多動性」、思いつくとすぐに行動してしまう「衝動性」などを特徴とする発達障害です。
その多くは12歳以前の小児期から見られますが、大人になってもADHDと診断されるケースはよくあります。
またADHDの診断基準をすべて満たしているわけではないものの、その傾向がある状態のことを俗に「グレーゾーン」と呼びます。
特に大人になると、多動性や衝動性は目立たなくなりますが、不注意の特性が強くなり、私生活での物忘れ、仕事中のうっかりミスや遅刻、作業時間の大幅なオーバーなどが多くなります。
実は、こうしたADHDに見られる症状は「時間盲」と密接に関わっているのです。
「時間盲」とは何か?
時間盲とは、頭の中で時間の経過を認識したり、測ったりすることができない状態を指します。
多くの人は時計を意識しなくても、出かける時間まであと何分あるか、着替えや準備にどれくらいかかるか、本を読んだりテレビを見ていて何十分経ったかが感覚的に分かるでしょう。
ところがADHDの人では、こうした時間感覚が抜け落ちてしまって、経過した時間や進行中のタスクにかかっている時間が分からなくなるのです。
具体的な例を挙げてみます。
最も大きな特徴は、時間の感覚を見失うことです。
例えば「お昼はいつ食べました?」とか「最後に旅行に行ったのはいつですか?」といった質問を受けると、それらの出来事がどれくらい前だったかが分からず、上手く答えられません。
また時間経過を体感で測ることも困難です。
9時30分に時計を確認し「30分だけ読書しよう」と本を読み始めて、「そろそろ時間かな」と思って時計を見ると12時を回っているということが頻繁にあります。
米マサチューセッツ総合病院(MGH)のスティーヴン・ガンズ(Steven Gans)氏によると、ADHDの人は「時間を意図的に無視しているのではなく、感覚的に忘れてしまう」点で共通しているといいます。
言い換えれば、あるタスクを始めると、それに集中したり夢中になりすぎるあまり、「何分くらい経ったか」という時間の意識がすっぽり抜け落ちてしまうのです。
そしてこうした時間盲が、ADHDの主症状として見られる不注意によるミスや物忘れを引き起こしていると考えられます。
では、どうしてADHDでは時間の感覚が失われてしまうのでしょうか?