女性は「恋人の愛想笑い」に気づいているかも?
人間は、進化の過程で複雑な音声を発達させたことで、微妙にニュアンスが異なる「笑い」を使い分けられるようになりました。
そのため、単純に楽しいときだけでなく、接客や社交辞令など、社会的な文脈に応じて笑いを操ることができます。
そこで、研究主任のサリー・ファーレイ(Sally Farley)氏は「笑いの生成には、”自発的な本物の笑い”と”意図的な作り笑い”の異なる2つの経路がある」と考え、両者がどのように識別されるかを調査。
今回の実験では、「友人」と「恋人」という親密度の高い2つのグループで交わされる笑いを対象としました。
まず、27名の参加者に、親しい友人(同性)と恋人のそれぞれで5分間の会話を電話口でしてもらいます。
計54の会話サンプルから笑いが起こった部分だけを切り抜き、のべ52の「笑い声サンプル」を得ました。
最初の実験では、アメリカ中部・大西洋岸地域の大学生50名を対象に、この52の笑い声サンプルについて、1(とても不自然・不快)〜9(とても自然・楽しい)の9段階で評価してもらいました。
また、それぞれのサンプルをランダムな順序で2回聞き、その笑いが友人に向けられたものか、恋人に向けられたものかを予想してもらいました。
結果、参加者は、両者の笑い声の違いを、偶然よりも高い制度で識別することに成功しています。
加えて、友人に向けられた笑いはとても自然に聞こえ、恋人に向けられた笑いはより不自然に聞こえやすい、と評価されました。
チームはこれと別に、先行研究から得られた12の笑い声サンプルを使い、オンライン上で募集した252名(男性125名、女性127名)にランダムな順序で聞かせ、友人への笑いか、恋人への笑いかを識別してもらいます。
その後、参加者は、各サンプルにつき、「自然・不自然」「冷たい・暖かい」「リラックス・緊張」「単調・変化的」「従順・支配的」などの項目で、先ほどと同じく9段階で評価するよう指示されました。
結果、笑いの識別の精度は非常に高く、またやはり、友人間の笑いは、恋人間に比べて、非常に自然で暖かく、変化に富んでいて、リラックスして聞こえることがわかっています。
さらに、友人間の笑いの識別に男女差はなかったものの、恋人間の笑いの識別は、女性の方が高い精度で見分けられることが判明しました。
以上をまとめると、次の2つのことが結論されます。
1つは、友人(同性)と交わす笑いは、心の底から楽しんでいる自発的な笑いで、恋人と交わす笑いには、愛想笑いや作り笑いが含まれやすいということ。
もう1つは、恋人間の愛想笑いは、男性より女性の方が感づきやすいということです。
日頃から、彼女や奥さんに愛想笑いをしている男性の皆さんは、機嫌を損ねないよう注意が必要かもしれません。