赤ちゃんを落ち着かせるには「輸送」が効果的
同チームは2013年に、母親が赤ちゃんを抱っこして歩くと、泣きの量が減り、大人しくなる現象を発見し、「輸送反応」として報告していました。
輸送反応はヒトだけでなく、マウスやサル、ライオンなど、他の哺乳類の赤ちゃんにも見られます。
一方で、当時の研究では、20秒ほどの短い輸送の効果しか調べておらず、親が歩くのをやめると、赤ちゃんはまたすぐに泣き始めていました。
そこで本研究では、より長い輸送が、赤ちゃんの泣きやみや生理指標に与える効果を調べることに。
実験では、生後7カ月以下の赤ちゃん21人とその母親に協力を募り、「抱っこして歩く」「抱っこして座る」「ベッドに置く」「ベビーカーに乗せて前後に動かす」という4つのタスクをランダムに行ってもらい、そのときの赤ちゃんの状態と心電図を記録しました。
まず、それぞれのタスクを30秒行った際の赤ちゃんの状態を声や目の開閉から解析します。
すると、激しく泣いていた赤ちゃんは、座ったままの抱っこだと泣きやまないのに対し、抱っこして歩くか、ベビーカーに乗せて前後に動かすと有意に鳴きやんでいました。
また、少しぐずっている程度の赤ちゃんだと、抱っこして歩く、あるいはベビーカーを動かすときは変化がなかったのに対し、座ったままの抱っこやベッドに置くと、むしろ泣き出してしまう傾向が見られました。
このことから、赤ちゃんの泣きやみには、やはり「輸送」が効果的であると考えられます。
泣きやみだけでなく、寝かしつける作用も
そこで今度は、激しく泣いている赤ちゃんに、30秒タスクで最も効果の高かった「抱っこ歩き」を5分間行いました。
すると、全員が泣きやんだ上に、約半数の45.5%が眠りについたのです。
さらに、他の18.2%の赤ちゃんは、5分後に歩くのをやめた時点では起きていましたが、それから1分以内には寝てしまいました。
よって、抱っこして5分歩くことは、泣きやみに効果的なだけでなく、赤ちゃんを寝かしつける作用もあると結論できます。
しかし、赤ちゃんが眠った後には「ベッドに移動させる」という難所があります。
今回も、母親の腕の中で寝付いた赤ちゃんをベッドに置いたとたん、3分の1が目を覚まし、泣き出してしまったのです。
では、この難関をクリアするには、どうすれば良いのでしょうか?