土星の輪はどのように形成されたのか?
土星の輪はどのように形成されたのか? / Credit:Canva
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”土星の輪”は崩壊した月「クリサリス」から形成された!?

2022.09.19 Monday

長年、惑星科学者たちは「土星の美しい輪はどのように形成されたのか?」という疑問を抱いてきました。

そして最近、アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)地球大気惑星科学科に所属するジャック・ウィズダム氏ら研究チームが行った土星のぐらつきに関する数値シミュレーションにより、「土星の輪」形成の新たな仮説が提出されました。

彼らによると、かつて土星の周りには「クリサリス」という衛星があり、これが崩壊して土星の輪が形成されたというのです。

研究の詳細は、2022年9月15日付の科学誌『Science』に掲載されました。

A Lost Moon Could Finally Solve The Weird Mystery of Saturn And Its Rings https://www.sciencealert.com/a-lost-moon-could-finally-solve-the-weird-mystery-of-saturn-and-its-rings Saturn’s rings and tilt might have come from one missing moon https://www.sciencenews.org/article/destroyed-moon-chrysalis-caused-saturns-rings
Loss of a satellite could explain Saturn’s obliquity and young rings https://www.science.org/doi/10.1126/science.abn1234

土星と海王星は以前に共鳴していた

土星の自転軸は現在26.7度に傾いています。

この傾きには、土星から第6衛星「タイタン」、海王星に至るまでの一連の重力作用が影響していると考えられてきました。

実際、土星の歳差運動(自転軸が円を描くようにぐらつく現象)の速度は、海王星の軌道全体がぐらつく速度に非常に似ていると報告されています。

歳差運動の例。自転軸が円を描くように変化する
歳差運動の例。自転軸が円を描くように変化する / Credit:Robert Simmon, NASA GSFC(Wikipedia)_歳差

土星の軸はコマのようにぐらついており、太陽をまわる海王星の軌道もフラフープのようにぐらついています。

そして両者のぐらつきがまるで「共鳴」しているかのように似ているというのです。

そこで今回、ウィズダム氏ら研究チームは、土星探査機カッシーニ(2004-2017年運用)から得られた最後のデータを元に、土星の重力場マッピング、惑星内の質量分布のモデル化、慣性モーメントの計算を行い、土星と海王星の共鳴について詳しく調査することにしました。

その結果、土星と海王星のぐらつきは非常に似ているものの、共鳴しているわけではないと分かりました。

しかしウィズダム氏は、「土星と海王星のぐらつきは非常に似ており、偶然ではありえない」と考えています。

そして、「以前は共鳴していたが、何らかの理由により、現在では共鳴しなくなった」という結論に達しました。

では、どんな理由で土星と海王星は共鳴しなくなったのでしょうか?

研究チームは、その原因が土星をまわる衛星にあったと考え、さらなるシミュレーションを実施しました。

次ページ「かつて存在していた衛星が土星の輪を形成した」というシナリオ

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