植物の生体電位を利用してロボットアームを動かす「芸術作品」
あらゆる生物では、生命活動に伴って「生体電位」が生じます。
生命活動に関わる情報伝達のために、さまざまな電気信号が流れているのです。
例えば、人間や動物が生きるためには、生体電位を伴う神経や筋肉の働きが欠かせません。
これは植物も同様です。
植物の生体内にはさまざまな電気信号が流れており、外的刺激によっても電位が変化します。
この変化を調べることで、植物が快適に感じる環境を見つけ出すことも可能なのだとか。
また生体電位の変化を外部に出力する研究も行われてきました。
例えば、植物の生体電位に応じて音楽を奏でるスピーカーなども存在します。
植物が作曲したり、何か意図をもって音を鳴らしたりするわけではありませんが、ある意味、植物を「脳」にしていると言えますね。
そして今回、デザイナーのボーエン氏は、生きた植物の葉とロボットアームをつなげた芸術作品「プラント・マチェット(Plant Machete)」を創作しました。
植物の葉から電気信号を拾い上げ、その流れに応じて、ロボットアームが動くようプログラムしたのです。
ロボットアームはそれぞれの関節の動きに従って、その腕を振るったり突き出したりとさまざまな動きを見せますが、それらは植物の電気信号のパターンに応じてリアルタイムに決定されているようです。
まさに植物を「脳」にしてロボットアームを動かしているのですね。
そしてボーエン氏は、なぜかこのロボットアームにマチェット(もしくはマチェテ)と呼ばれる山刀を持たせています。
関節の動きを分かりやすくする効果はあるようですが、いささか物騒な発明ですね。
自由自在にマチェットが振られる光景は、まるで植物に意志があって、相手を切りつける練習をしているかのようです。
ボーエン氏は、どうしてこの作品を創ったのでしょうか?
彼は、「私の作品はさまざまな方法で’ばかばかしさ’を探求しています」と述べました。
彼の他の作品には、「容器内のハエの動きに対応した文字が打ち込まれ、140文字に達するとTwitterに投稿される」ものや、「容器内のハエの動きに応じてリボルバーの狙いが定まり、引き金が引かれる」ものがあります。
どれもプラント・マチェットと同様、道具や武器の制御を自然界にゆだねているのです。
この制御に意図を見出そうとするのは、確かに’ばかばかしい’ことなのかもしれません。
それでもボーエン氏は、’ばかばかしさ’だけを求めているわけではありません。
彼はこうも付け加えています。
「しかし私は、これらのデータが完全にランダムだとは思っていません。
植物は水と光における驚くべき技術者です。
ハエの動きにも意味があって、予測可能なはずです」
ボーエン氏は自然界に見られる法則や緻密さに感銘を受けています。
だからこそ、それらに道具を制御させたとしても、何らかの規則性を見出せると期待しているのです。