太陽光だけで海水から淡水を得る
アラブ首長国連邦を含む多くの国では、飲水不足に悩まされています。
いくつかの発展途上国では水汲みが女性たちの仕事であり、淡水を入手するために毎日3時間も歩くことも珍しくありません。
たとえ海に面する沿岸地域であっても、淡水の入手については苦労することになります。
しかし、海水については低コストの淡水化の仕組みがあれば、この問題を解決できるかもしれません。
そこでマンハット社は、電気を使わない淡水化システムを考案しました。
その構造は非常にシンプルです。
まず特殊な形状の筒型デバイスを海に設置します。
海面が太陽光で温められると、水が蒸発して上っていき、気温が下がると凝縮して天井で水滴を作ります。
天井が斜めに傾いているため、水滴は海面に落下することなく、貯水部で集めることができるようです。
このメカニズムから理解できる通り、電気を全く使用していません。
このシステムなら放置しておくだけで、太陽光の力で淡水化してくれるのです。
上記の構造では海上でしか恩恵が得られませんが、複数のデバイスを連結させることで、蒸発と凝縮を繰り返し、陸地まで淡水を運ぶことも可能なのだとか。
マンハット社は、太陽光が照射される海面の表面積1平方メートルあたり、毎日5リットルの淡水が入手できると主張しています。
他の淡水化デバイスと比べて安価であること、沿岸地域であれば場所を選ばないこと、エネルギー消費がないこと、拡張性があることなどを考えると、将来性のあるシステムだと言えます。
またマンハット社は、この淡水化プロセスを利用して、海上農園の開発も計画しています。
蒸発・凝縮で得られた淡水をそのまま植物を育てるために利用するのです。
施設の上部では、ソーラーパネルによる太陽光発電も同時に行い、施設のシステム管理に利用します。
現在はプロトタイプによるテストが行われている最中ですが、実際に電力ゼロで淡水化できたようです。
また、パフォーマンスを向上させるためにいくつかの改良も加えられているのだとか。
テスト後は小麦や米を含む作物を生産できるようスケールアップする予定です。
マンハット社は、「5年後には、商業的価値の高いさまざまな作物を栽培できるでしょう」と述べています。
そして最近、マンハット社は、水関連の革新的なアプローチやソリューションを評価する「ウォーター・ヨーロッパ・イノベーション・アワード2022(Water Europe Innovation Awards 2022)」を受賞しました。
もしこの技術が発展するなら、水不足と作物不足で苦しんでいる沿岸地域の人々を救うことができるかもしれません。