トレイルの天敵は「水」だった
水は人工的なトレイルの天敵です。
流れてきた水によって、トレイルが侵食されたり、ぬかるんで使えなくなったりするからです。
そのためデザイナーは、地形図の標高と水の流れを計算しながら、トレイルを設計します。
大切なのは、最大傾斜線(山の斜面で谷に向かって最も傾斜がある方向。水が流れる際にたどる線)とトレイルの角度です。
最大傾斜線と平行に近い角度でトレイルを作ると、雨が降った時にトレイルが排水溝になり、水が流れやすくなります。
こうなると、時間が経つにつれてトレイルが浸食され、幅も広くなって使えなくなるでしょう。
だからといって、最大傾斜線と直角に走るトレイルを作るのも不適切です。
水が下方に全く流れず貯まり、トレイルに大きな泥穴ができてしまうのです。
これら全てに配慮するデザイナーは、最大傾斜線に対して45度の角度でトレイルを作ります。
水がトレイルを下るのではなく横切るようにすることで、水の被害を最小限に抑えることができるのです。
他にも、トレイルの勾配や地面の素材など、考慮すべきことはたくさんあります。
それらすべてを計算してデザインするなら、利用者はトレイルに人間が関わっていることを忘れるようになります。
次にトレイルを歩く時、デザイナーの知恵に注目してみるなら、いつもと違った楽しみ方ができるでしょう。
それでもやはり、デザイナーの存在を忘れて、ひたすら自然を満喫するのが正解なのかもしれません。
人工的なトレイルから自然だけを感じること、それがトレイルデザイナーの本望なのです。