78万年前に焼き魚!ヒトが「火を使った料理」の最古の証拠を発見
78万年前に焼き魚!ヒトが「火を使った料理」の最古の証拠を発見 / Credit: canva
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78万年前に焼き魚!ヒトが「火を使った料理」の最古の証拠を発見

2022.11.17 Thursday

”人間”を正しく定義するのは難しいですが、他の動物と最も大きく違う点は「火を使う」ことでしょう。

火を操る技術は人間の特権であり、そのおかげで私たちは自然界で一歩抜きん出た存在となり得たのです。

そしてこのほど、イスラエル・テルアビブ大学(Tel Aviv University)、英ロンドン自然史博物館(NHM)らの共同研究により、ヒト属が火を使って料理をした最古の考古学的証拠が発見されました。

研究者によると、イスラエルのゲシャー・べノット・ヤーコブ(Gesher Benot Ya’akov)遺跡にて、約78万年前に大型のコイ科魚類を加熱した証拠が見つかったという。

これまでの記録は、アフリカで見つかった約17万年前のデンプン質の植物を加熱した痕跡が最古でしたが、今回はそれを60万年も遡る結果となりました。

研究の詳細は、2022年11月14日付で学術誌『Nature Ecology and Evolution』に掲載されています。

The Oldest Evidence of Ancient Humans Cooking With Fire Was Just Found https://www.sciencealert.com/the-oldest-evidence-of-ancient-humans-cooking-with-fire-was-just-found Oldest evidence of the controlled use of fire to cook food https://phys.org/news/2022-11-oldest-evidence-cook-food.html
Evidence for the cooking of fish 780,000 years ago at Gesher Benot Ya’aqov, Israel https://www.nature.com/articles/s41559-022-01910-z

500℃以下の低温の火で炙っていた可能性

ヒト属がいつから火を使った料理を始めたかという問題は、1世紀以上にわたって多くの議論がなされてきました。

単純に火を使っただけの証拠であれば、少なくとも150万年前のアフリカで、ホモ・エレクトス(Homo erectus)が燃やした木炭が見つかっています。

しかし、食べ物を加熱した確かな証拠を見つけるのは非常に困難でした。

遺跡で見つかったコイ科の咽頭歯(青色)を分析
遺跡で見つかったコイ科の咽頭歯(青色)を分析 / Credit: Tel Aviv University – Oldest evidence of the controlled use of fire to cook food(phys, 2022)

今回の研究では、イスラエルのゲシャー・べノット・ヤーコブ遺跡で大量に出土した魚の歯が調べられました。

具体的にはコイ科の大型魚類の咽頭歯で、貝殻などの硬い食べ物をすりつぶすのに使われます。

歯のエナメル質を形成する結晶(熱にさらされると大きくなる)の構造を調べたところ、この魚が加熱調理に適した温度にさらされた証拠が得られました。

化学的手法を用いた分析の結果、200〜500℃の温度に当てられていたことが判明したのです。

タバコの温度が大体700〜800℃、ローソクの火が約1400℃ですから、この温度は決して高くありません。

しかし、魚にしっかり火を通すのには適した温度であり、魚が火の元から程よい距離で炙られたことを意味しています。

NHMのイェンス・ナヨルカ(Jens Najorka)氏は「魚が正確にどう調理されたかは分かりませんが、高温の火にかけられた形跡がないため、魚が生ゴミや燃焼材料として火に投げ込まれたわけではないことは確かです」と説明します。

加熱調理のイメージ図
加熱調理のイメージ図 / Credit: Tel Aviv University – Oldest evidence of the controlled use of fire to cook food(phys, 2022)

また、魚の歯が見つかった場所からは、火をおこすために使用したと見られる焦げた火打ち石も見つかったという。

ゲシャー・べノット・ヤーコブ遺跡は、更新世(約258万〜1万年前)の中期に当たる約78万年前の遺跡であることから、火を使った調理の証拠としては、最古の記録を大幅に更新することとなりました。

78万年前といえば、現生人類(ホモ・サピエンス)やネアンデルタール人もまだ登場していません。

研究者は、この加熱調理を行ったヒト属は更新世に生きていたホモ・エレクトスの可能性が高いと推測しています。

また、ここで加熱調理されたコイ科の魚は同遺跡のすぐ北側に位置する、今はもう存在しない古代フラ(Hula)湖で獲られたものと見て間違いないとのこと。

採集された歯の化石は、大型のコイ科2種(Luciobarbus longicepsとCarasobarbus canis)に偏っており、中には全長2メートルに達するような巨大コイの種も含まれていたといいます。

魚は同遺跡のすぐ北側にあった古代の湖で採取された可能性
魚は同遺跡のすぐ北側にあった古代の湖で採取された可能性 / Credit: canva

研究主任のイリト・ゾハール(Irit Zohar)氏は、次のように話します。

「遺跡から見つかった大量の魚の遺骨(ほとんど歯)は、当時のヒト属が頻繁に魚を食べていたことを意味します。

この新しい発見は、先史時代のヒトの生活にとって、魚が重要な食材であったこと調理のために火をコントロールする能力を持っていたこと、そして魚を加熱してから食べることの利点を理解していたことを示すものです」

また研究チームは、生食から加熱された食物を食べるようになったことが、ヒトの発達と行動に劇的な変化を起こしたと指摘します。

加熱されたものを食べることは、生食とは違い、食物の分解と消化に必要なエネルギーを大幅にカットできます。

それによって、腸以外の身体システムの発達が促されたと考えられるのです。

さらに、生で食べる食材を探し、すぐに消費しなければならない日々の生活から解放され、火を使った効率的な食習慣や社会システムが構築されたかもしれません。

火の発明は、多方面に多大なる影響を及ぼし、ヒトを大きく飛躍させました。

今回の発見は、その飛躍が予想よりずっと早く起こっていたことを示唆しています。

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