お皿の色を変えるだけで味に変化が⁈
偏食は一般に、口にできる食材の種類の狭さ、特定の食品に対する強い嫌悪感、なじみのない食材を受け入れることへの抵抗感などで定義されます。
特に偏食傾向の激しい人は、生涯を通じて20種類以下の食材しか消費しないと言われているほどです。
研究主任のロレンゾ・スタッフォード(Lorenzo Stafford)氏は、次のように述べています。
「偏食傾向が強いと栄養不足になるだけでなく、歯や骨の疾患、心臓病のリスク増大など、さまざまな健康上の問題を引き起こす可能性があります。
また、偏食家が人前で食事することを恥ずかしいと思ったり、プレッシャーに感じたりすると、普段は楽しいはずの友人や家族との時間が、ストレスや不安、対立を引き起こす状況に変わってしまうため、社会的なコストも発生します。
だからこそ、偏食の要因を理解し、好き嫌いを無理なく緩和する方法が重要になるのです」
これまでの研究で、食べ物の匂いや食感が偏食家の味覚に大きく作用することが分かっていますが、それ以外の感覚についてはほとんど知られていません。
そこでスタッフォード氏ら研究チームは、食事の際必ず目に入る「お皿の色」の影響を調べることにしました。
実験ではまず、47名の参加者に協力してもらい、なじみのない食材への嫌悪感や抵抗感を示す「フード・ネオフォビア(Food Neophobia)」の測定を実施。
そのスコアをもとに、参加者を好き嫌いの強い「偏食グループ」と好き嫌いのない「非偏食グループ」に分け、赤・白・青のボウルに盛られた同じスナック菓子を試食してもらいました。
参加者には、ボウルの色ごとにスナック菓子の塩味や美味しさについて評価してもらいます。
その結果、非偏食グループでは、ボウルの色が変わっても主観的な味の感じ方は変わらなかったのに対し、偏食グループでは、ボウルの色が塩味と美味しさの知覚の両方に変化を与えることが示されたのです。
具体的には、赤と青のボウルで出されたスナックは白のボウルに比べて塩味が強いと感じ、赤のボウルで出されたときに、スナックの美味しさが最も低く評価されていました。
その理由はまだ定かでありませんが、研究チームは「イギリスでは塩味のスナック菓子がよく青色のパッケージで売られていることも関係しているのではないか」と述べています。
となると、日本では味覚に影響を与えるお皿の色が違ってくるかもしれません。
スタッフォード氏は、本研究について「成人の偏食家において、食器の色の違いが味覚に異なる影響を与えることを示した最初の成果と考えられる」と述べています。
それゆえ、この分野の研究はまだ始まったばかりであり、これからスナック以外の食材やお皿の色、食器の形まで、あらゆる組み合わせでの検証が期待されます。
また、こうした実験は専門家の結果報告を待たずとも、自宅で食材やお皿の色を変えながら模索することも可能でしょう。
スタッフォード氏は「この知見は食べられる食品のレパートリーを増やそうとしている人にとって非常に有用です」と付け加えます。
「たとえば、主観的に食材の甘味が増す食器の色が見つかれば、どうしても苦いと感じる野菜が食べられるようになるかもしれません。
今後さらなる調査を進めることで、偏食家の食生活や心身の健康を改善する方法が見つかるはずです」