9段階にランク付けされた「夜空の見え方」
「ボートル・スケール」は、アメリカのアマチュア天文家ジョン・ボートル(John Bortle)氏によって2001年に発表されました。
これは簡単に言うと、場所ごとの光害レベルに応じて「夜空の見え方」を1〜9段階にランク付けしたものです。
ボートル・スケールを用いれば、光害の悪影響がどれくらいかを評価したり、どの程度の明るさの星なら肉眼で見えるかが分かります。
ちなみに、こちらの「lightpollutionmap.info」を見れば、自分が住んでいる場所のボートル・スケールが検索できます。
では実際に、各ランクにはどういった夜空の特徴があるのでしょうか?
レベル9:都心部の空
レベル9は最も光害が深刻な夜空を指し、全域に広がった光害のせいで、夜空はオレンジ色っぽく光っています。
ほとんどの星が肉眼には映らず、かろうじて月といくつかの明るい恒星が見える程度です。
このレベルだと、光害が人体の健康に影響を及ぼす可能性もあります。
たとえば、夜間に明るい光を浴びて体内時計が乱れると、睡眠障害や不安症、肥満、うつ病を発症するリスクが高まります。
肉眼での限界等級は4.0等以下です。
※ 限界等級(Naked-Eye Limiting Magnitude, NELM)とは、夜空の環境において、裸眼で見られる最も暗い星の等級を示したもの。1等星が最も明るく、数字が大きくなるほど星の光度は落ちる。
レベル8:都市部の空
このレベルでも光害は非常に強く、夜空はオレンジ色か白っぽい灰色に輝きます。
空の明るさで、手元の本や新聞の文字も楽々と読めるほどです。
レベル9よりは肉眼で見える星もちらほら増えますが、まだほとんどの天体が見えません。
肉眼での限界等級は4.1〜4.5等です。
レベル7:郊外と都市部の境
光害にともなう強い光源が天上の四方八方にはっきり現れており、夜空全体がぼんやりと灰白色に染まっています。
雲は明々と照らされており、星もあまり見えません。
肉眼での限界等級は4.6〜5.0等です。
レベル6:明るい郊外の空
ここでは、光害が地平線から35°までの空を灰白色に照らし出します。
雲は空のどこにあってもはっきり見て取れ、地上でも身の周りの環境が容易に見えます。
先ほどに比べると、目に見える星や星座も増えますが、まだ光害の影響は強く残っています。
肉眼での限界等級は5.1〜5.5等です。
レベル5:郊外の空
光害による強い光源が全方位ではないものの、ある程度の広い範囲に存在します。
夜空の大部分にわたって、雲が背景の空そのものよりも明るく目立っています。
天の川が地平線近くで非常にかすかに見え始めますが、頭上では押し流されたように見えます。
現在、私たちのほとんどは、このレベル5の環境で生活しているそうです。
肉眼での限界等級は5.6〜6.0等です。
レベル4:田舎と郊外の境
いくつかの方角に目に見えるドーム状の光害がありますが、目に見える夜空はだいぶ暗くなります。
夜空の雲は光源のある方向では照らし出されますが、頭上では暗く見えづらいでしょう。
地上の周辺環境は距離が多少あっても目に見えますが、そろそろ懐中電灯や照明器具が必要です。
夜空に見える星々もかなり増えています。
肉眼での限界等級は6.1〜6.5等です。
レベル3:田舎の空
地平線状に光害の痕跡がかすかに残っていますが、頭上の空は真っ暗です。
雲も地平線に近いところなら見えますが、頭上やその周辺ではもはや見えません。
ここまで来ると、さそり座にあるM4、ペガスス座にあるM15、いて座にあるM22などの球状星団が肉眼で見え始めます。
肉眼での限界等級は6.6〜7.0等です。
レベル2:代表的な真に空が暗い土地
ここまで来ると、光害の影響はほぼ皆無で、燦然と輝く星々が夜空に広がります。
夜空に雲がかかっていても、明るい星空の中にポッカリ開いた暗い穴や空洞にしか見えません。
多くの球状星団やメシエ天体(銀河や星雲)が肉眼で見え、望遠鏡を持ってすれば、本格的な天体観測ができるでしょう。
肉眼での限界等級は7.1〜7.5等です。
レベル1:優れた光害フリーの土地
そしてレベル1が、地球上で最も暗い夜空を指します。
光害の影響がまったくなく、大気光(地球の大気が放つ微弱な発光現象)も容易に見ることができます。
夜空が明るい星や銀河、球状星団で輝くのに対し、地上はほとんど真っ暗です。
木立に囲まれた草原で観測すれば、望遠鏡も手持ちの荷物、乗ってきた車や近くにいる観測仲間も見えないでしょう。
これぞ、天体観測家にとっての”涅槃(ニルヴァーナ)”と呼べる境地です。
肉眼での限界等級は7.6〜8.0等です。