光害レベルに応じて「夜空の見え方」はどう変わる?
光害レベルに応じて「夜空の見え方」はどう変わる? / Credit: Stargazer Milan – What is Bortle Scale ? & How to find the Bortle Scale of any location ?(youtube, 2022)
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都市の明かりがなかったら「地球の夜空」にはどれくらい星が見えるのか?

2022.12.10 Saturday

今住んでいる場所から夜空を見上げてみてください。

さて、どれくらいの星々が目に見えるでしょうか?

もし2〜3個の明るい星や月しか見えないのなら、きっと大都会にお住まいなのでしょう。

現代の都会は照明技術の発達と普及によって、夜でも煌々と明るい街並みが広がっています。

天体観測を楽しもうと思えば、田舎か山の方まで足を運ばなければなりません。

このように、都会の夜景はそれ自体美しいとはいえ、もう一つの”天上の夜景”を覆い隠してしまいました。

その光害のレベルを表す尺度として、「ボートル・スケール(Bortle Scale)」というものがあります。

これを見れば、私たちが普段いかに夜空の星が見えていないかが分かるはずです。

This graphic shows how many more stars you can see under truly dark skies vs. city, suburban, and rural areas https://www.businessinsider.com/what-dark-skies-look-like-how-many-more-stars-than-cities-suburbs GAUGING LIGHT POLLUTION: THE BORTLE DARK-SKY SCALE(2006) https://skyandtelescope.org/astronomy-resources/light-pollution-and-astronomy-the-bortle-dark-sky-scale/

9段階にランク付けされた「夜空の見え方」

「夜空の見え方」を9段階でランク付け
「夜空の見え方」を9段階でランク付け / Credit: Stargazer Milan – What is Bortle Scale ? & How to find the Bortle Scale of any location ?(youtube, 2022)

「ボートル・スケール」は、アメリカのアマチュア天文家ジョン・ボートル(John Bortle)氏によって2001年に発表されました。

これは簡単に言うと、場所ごとの光害レベルに応じて「夜空の見え方」を1〜9段階にランク付けしたものです。

ボートル・スケールを用いれば、光害の悪影響がどれくらいかを評価したり、どの程度の明るさのなら肉眼で見えるかが分かります。

ちなみに、こちらの「lightpollutionmap.info」を見れば、自分が住んでいる場所のボートル・スケールが検索できます。

では実際に、各ランクにはどういった夜空の特徴があるのでしょうか?

レベル9:都心部の空

レベル9の夜空
レベル9の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

レベル9は最も光害が深刻な夜空を指し、全域に広がった光害のせいで、夜空はオレンジ色っぽく光っています。

ほとんどの星が肉眼には映らず、かろうじてといくつかの明るい恒星が見える程度です。

このレベルだと、光害が人体の健康に影響を及ぼす可能性もあります。

たとえば、夜間に明るい光を浴びて体内時計が乱れると、睡眠障害や不安症、肥満、うつ病を発症するリスクが高まります。

肉眼での限界等級は4.0等以下です。

※ 限界等級(Naked-Eye Limiting Magnitude, NELM)とは、夜空の環境において、裸眼で見られる最も暗い星の等級を示したもの。1等星が最も明るく、数字が大きくなるほど星の光度は落ちる。

レベル8:都市部の空

レベル8の夜空
レベル8の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

このレベルでも光害は非常に強く、夜空はオレンジ色か白っぽい灰色に輝きます。

空の明るさで、手元の本や新聞の文字も楽々と読めるほどです。

レベル9よりは肉眼で見える星もちらほら増えますが、まだほとんどの天体が見えません

肉眼での限界等級は4.1〜4.5等です。

レベル7:郊外と都市部の境

レベル7の夜空
レベル7の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

光害にともなう強い光源が天上の四方八方にはっきり現れており、夜空全体がぼんやりと灰白色に染まっています。

雲は明々と照らされており、星もあまり見えません

肉眼での限界等級は4.6〜5.0等です。

レベル6:明るい郊外の空

レベル6の夜空
レベル6の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

ここでは、光害が地平線から35°までの空を灰白色に照らし出します。

雲は空のどこにあってもはっきり見て取れ、地上でも身の周りの環境が容易に見えます

先ほどに比べると、目に見える星や星座も増えますが、まだ光害の影響は強く残っています。

肉眼での限界等級は5.1〜5.5等です。

レベル5:郊外の空

レベル5の夜空
レベル5の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

光害による強い光源が全方位ではないものの、ある程度の広い範囲に存在します。

夜空の大部分にわたって、雲が背景の空そのものよりも明るく目立っています。

天の川が地平線近くで非常にかすかに見え始めますが、頭上では押し流されたように見えます。

現在、私たちのほとんどは、このレベル5の環境で生活しているそうです。

肉眼での限界等級は5.6〜6.0等です。

レベル4:田舎と郊外の境

レベル4の夜空
レベル4の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

いくつかの方角に目に見えるドーム状の光害がありますが、目に見える夜空はだいぶ暗くなります。

夜空の雲は光源のある方向では照らし出されますが、頭上では暗く見えづらいでしょう。

地上の周辺環境は距離が多少あっても目に見えますが、そろそろ懐中電灯や照明器具が必要です。

夜空に見える星々もかなり増えています。

肉眼での限界等級は6.1〜6.5等です。

レベル3:田舎の空

レベル3の夜空
レベル3の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

地平線状に光害の痕跡がかすかに残っていますが、頭上の空は真っ暗です。

雲も地平線に近いところなら見えますが、頭上やその周辺ではもはや見えません。

ここまで来ると、さそり座にあるM4、ペガスス座にあるM15、いて座にあるM22などの球状星団が肉眼で見え始めます。

肉眼での限界等級は6.6〜7.0等です。

レベル2:代表的な真に空が暗い土地

レベル2の夜空
レベル2の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

ここまで来ると、光害の影響はほぼ皆無で、燦然と輝く星々が夜空に広がります。

夜空に雲がかかっていても、明るい星空の中にポッカリ開いた暗い穴や空洞にしか見えません。

多くの球状星団やメシエ天体銀河や星雲)が肉眼で見え、望遠鏡を持ってすれば、本格的な天体観測ができるでしょう。

肉眼での限界等級は7.1〜7.5等です。

レベル1:優れた光害フリーの土地

レベル1の夜空
レベル1の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

そしてレベル1が、地球上で最も暗い夜空を指します。

光害の影響がまったくなく、大気光(地球の大気が放つ微弱な発光現象)も容易に見ることができます。

夜空が明るい星や銀河、球状星団で輝くのに対し、地上はほとんど真っ暗です。

木立に囲まれた草原で観測すれば、望遠鏡も手持ちの荷物、乗ってきた車や近くにいる観測仲間も見えないでしょう。

これぞ、天体観測家にとっての”涅槃(ニルヴァーナ)”と呼べる境地です。

肉眼での限界等級は7.6〜8.0等です。

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