同じ情報でも「口頭」と「書面」では反応が異なると判明!
私たちはこれまで、情報や質問に対して直感的か分析的は個人の性格によるものとする考えを、当たり前のように受け入れてきました。
心理学実験や世論調査でも回答方式が同じ5段階評価(定量調査)で行われるなら、被験者への質問が口頭であろうと書面であろうと結果に差がないことが期待して行われています。
しかし私たちは経験的に、口頭と書面では緊張の度合いをはじめ、受ける感覚に大きな違いがあることを知っています。
例えば告白を口頭で伝えられるか、ラブレターで伝えられるかでも印象は大きく変わるはずです。
ではこのとき口頭と書面で、私たちは異なる思考の仕方をしていることになるのでしょうか?
質問内容と回答方式が同じなら、口頭と書面で結果は同じなのでしょうか、それとも違うのでしょうか?
謎を解明すべく、エクセター大学の研究者たちは1243人の被験者に対して、雑学問題・なぞなぞ問題・推理問題などさまざま問題を口頭と書面で伝えたときに、被験者たちの回答パターンに違いが出るかを調べることにしました。
(※質問に対する選択肢には、直感的には正しいようにみえて実は間違っているものや、かなり分析的な思考を使わなければ正しい答えが得られないものが含まれていました)
結果、口頭での質問は被験者たちにより直感的な反応を促し、書面での質問はより分析的な反応を引き起こしていたことが判明します。
再び告白を例にとるならば、口頭で告げる場合にはその場のノリを含めた直感的な反応が起こりやすく、書面で申請した場合には付き合った後などの分析的な反応が得られやすいことになります。
一見すると当然のように思えますが、心理学実験や世論調査に与える影響は甚大です。
口頭か書面かで結果が真逆になることはありませんが、微妙な違いを検証する場合には、誤差が有意差になったり、逆に有意差が誤差に転落することもあり得るからです。
また研究者たちは今回の調査結果は、医学・ビジネス・法律などあらゆる分野に影響すると考えています。
たとえば新しい法案や新しい企画の審議するとき、これまでは法案や企画書の内容を「読んだとき」と「聞かされたとき」の違いを一切考慮せずに判断が行われていました。
内容を読んだか聞いたかで印象が劇的に変化することはなくても、微妙なラインめぐる争いのときには、直感的に判断したか分析的に判断したかは、成否を決める差となるでしょう。
しかしそうなると気になるのが、口頭と書面での差を決めている要因です。
研究者たちは、口頭での伝達方法は誰もが言葉を覚える過程で自然に学ぶ一方で、書面での伝達方法は「教育」という形式をとっている点、そして口頭での伝達はしばしば論理が破綻していても問題視されないものの、書面での伝達は論理破綻が許されない点などが重要な違いであると述べています。
つまり口頭に比べて書面での伝達は論理的な思考を促されるように、私たちは訓練されているため、書面で情報を受け取ったときには、論理的な反応を起こしやすくなっていたのです。
研究者たちは今後、口頭と書面での情報伝達で結果の偏りをうまないために、口頭で伝えた場合の結果と書面で伝えた場合の結果の両方を考慮する必要があると述べています。
ただ、この結果を見るともし告白をするなら、手紙で伝えるより面と向かって答えを迫った方が勢いで上手くいく可能性は高いのかもしれません。