自分が試験を受けることで未来の誰かを救える
アリッサが治療を決断した動機は、未来の子供たちのためでもありました。
治療にあたって13歳の少女「アリッサ」は
「私がそれ(試験)をやれば、人々は(結果から)何をする必要があるかを何らかの方法で理解できるようになるでしょう」
と述べています。
自分がリスクがある治療を受けるのは、自分と同じ病に苦しむ同世代の子供たちを救うためでもあったのです。
幸い、改造T細胞たちは致命的な副作用を起こさず、アリッサの体内でがん化したT細胞を順調に殺していきました。
そして、わずか28日後にはアリッサの白血病は寛解し、2度目の骨髄移植が行われると徐々に免疫力も回復していきました。
そして治療から6カ月が経過した現在、アリッサは病院から退院し、家庭での生活が再びはじまりました。
元気になったアリッサは、学校に戻り、自転車に乗りはじめ、叔母の結婚式では花嫁介在人の役割を果たしました。
研究者たちは、今回のアリッサの治療で使ったのは、ベース編集技術のほんの一端に過ぎないと述べています。
アリッサの治療では正常な遺伝子の一部を壊すことで改造T細胞同士の殺し合いを防ぎました。
しかし同じような操作を行うことで、欠陥のある遺伝子を正しいものに書き換えることが可能になります。
たとえば有名な鎌状赤血球貧血症は赤血球を作る幹細胞に起きた1塩基の変異によって引き起こされるため、ベース編集技術を使えば修正することが可能になります。
研究者たちは現在、遺伝性の高コレステロール症や遺伝性の血液疾患においてベース編集技術を用いた治療試験を行っている、とのこと。
安全性の高いベース編集技術は、将来の遺伝子治療の基礎も作ってくれるでしょう。