雲の重さを推定する方法と結果「実は相当重かった」
雲は、「大気中にかたまって浮かぶ水滴や氷の粒」と定義できます。
つまり雲の重さを推定したいなら、雲の中に含まれる水滴(氷の粒)の総量を調べればよいのです。
(雲を「白く見える空間」として捉えるなら、水滴と水滴の間の空気の重さも計算すべきですが、今回は省きます)
水滴の総量を計算するには、雲の体積と水滴の密度を考える必要があるでしょう。
そして実際にこの計算を行ったのが、アメリカ大気研究センター(NCAR)の大気学者マーガレット・レモン氏です。
レモン氏が雲の体積を推定するために目を付けたのは、積雲でした。
積雲とは、底が平らで、横ではなく上に向かって成長する雲です。
この特性ゆえ、横に広がっていく不定形な他の雲とは異なり、ある積雲は高さと幅が同じ長さの「立方体」のような形状へと成長します。
こうした積雲を探し、あとは雲の影から分かる一辺の長さを測れば、大まかな体積が判明します。
そしてレモン氏は、ちょうど一辺が1kmの「立方体の積雲」を計算対象にしました。
当然、この積雲の体積は1km3です。
東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの面積の合計が約1km2なので、これに高さが1kmまでを含めた空間をイメージすれば1km3になります。
ちなみに入道雲とも呼ばれる「積乱雲」では一辺が2~10km、台風時の雲の端から端の距離が1000kmほどまで大きくなります。
雲には決まった大きさはないので、重さを考えるときにどんな雲を想定するかは難しい問題ですが、「1km3の積雲」というのは大きすぎず小さすぎずちょうどいい基準になるかもしれません。
次は、雲に含まれる水滴の密度です。
レモン氏は事前の研究により、雲における水滴の密度は1m3あたり約0.5gだと推定しました。
その結果、それぞれの数値から導き出される1km3の積雲の重さは、「約500トン」という結果になります。
これは「ゾウ100頭分」もしくは「全長70mの巡視船1隻」の重量に相当します。
巨大生物の群れや鉄の塊が空に浮かんでいることを考えると、「雲は想像以上に重かった」という感想を抱く人も多いでしょう。
500トンという水の重量は25mプールに収まっている水の総重量と同じです。つまり学校のプールの水が、「東京ディズニーランドとディズニーシーの面積 + 高さ1km」の範囲に拡散している状態と言えるでしょう。
では、500トンもの水が空中の広範囲に浮かんでいられる理由はなんなのでしょう?