宇宙で太陽光発電して地球に送電する「宇宙太陽光発電システム」
人類が継続的にエネルギーを得ていくためにも、クリーンな太陽光発電をさらに発展させることは重要です。
しかし従来の太陽光発電は、地球の面積や昼夜サイクルの制限を受けます。
この限界を解消するアイデアが「宇宙太陽光発電システム(SSPS:Space Solar Power System)」であり、1968年に提唱されました。
宇宙空間に巨大なソーラーパネルを配置し、マイクロ波送電アンテナによってそこで得た電力を地球に送るというのです。
SSPSには、「昼夜・天候の影響を受けない」「地球上の約1.4倍の高強度の太陽光を利用できる」「電力を必要としている地域に柔軟に送電できる」などのメリットがあります。
とはいえ、大きな課題が山積みです。
宇宙空間に巨大な構造物を作って維持するのにかかるコスト(輸送・建設・維持・廃棄)は莫大です。
そもそも、巨大なソーラーパネルをそのままロケットに積むことはできず、「大量の建材を宇宙空間に運んで構築する」新しい技術が必要になります。
SSPSのサイズは、十分な電力を生成するために「1辺が数km」必要という意見もあります。
しかし現在運行している国際宇宙ステーション(ISS)のサイズは108.5m×72.8mですが、建造には実に40回以上のロケット打ち上げが必要でした。
これを考えると、従来の方法でSSPSを建設することは非常に困難であることがわかります。
さらに「電力を地球上の生物に悪影響を与えない形で送る」ためにも高度な技術が必要です。
仮に完成したとしても、その巨大な構造物を宇宙塵やスペースデプリから保護したり、修理したりしなければいけないでしょう。
こうした高いハードルゆえ、SSPSはあくまでSF的なアイデアに過ぎず、「絵空事のプロジェクト」だったのです。
しかし数々の研究活動が成果をあげていき、その絵空事のプロジェクトが徐々に現実味を帯びてきました。
そして今回、カリフォルニア工科大学(Caltech)の研究チームが1つのマイルストーンに到達しました。