ボノボは見知らぬ相手の感情のほうが仲間の感情より興味があると判明!
ボノボはチンパンジーと並んで、人類に最も近い種と考えられています。
しかしボノボには人類やチンパンジーには存在しない、極めて平和的・外向的な側面があることが知られています。
例えば食べ物を分け与えるとき、人類やチンパンジーは家族や仲間などの「身内」を優先する傾向が強くなっていますが、ボノボの場合は「身内」よりも見知らぬ「よそ者」のほうに優先して食べ物を分け与えることが知られています。
そこで今回ライデン大学の研究者たちは、ボノボのよそ者愛がどれほど根深いかを調べる実験を行うことにしました。
調査にあたってはまず、ボノボにスクリーン上の点を押させる訓練が行われました。
点を押すと2つの画像が短期間表示されます。
一方の画像は同じグループに属する身内ボノボの画像、そしてもう一方は見知らぬよそ者ボノボの画像となっています。
画像のボノボはさまざまなシーンのものが用意されてあり、恐怖・遊び・性などさまざまな感情に関連した表情や行動が映し出されています。
実験では、これら2枚の画像が消えると、どちらからの後ろに新たな点が表示され、ボノボが新たな点に素早くタッチできたときだけ「リンゴ」のご褒美がもらえるように設定されました。
すると、より強く注目していた画像の背後に点が現れた方が、より速くタッチできることが判明します。
この仕組みを利用して研究者たちはボノボの身内とよそ者に対する興味の強さを比べてみることにしました。
結果、ボノボも人類も感情的な表情をした画像のほうに強く注意が向けられると判明。
しかし身内とよそ者に対する反応は逆転していました。
人類の場合、最も注意が向けられる画像は家族や仲間など「身内」の感情的な表情が映った画像です。
ですがボノボの場合は逆で、最も注意が向けられたのは見知らぬ「よそ者」の感情的な表情が映った画像でした。
研究者たちはこの実験結果について、食べ物を分け与える実験と同じく、ボノボのよそ者好きの性質が強く表れたものになったと述べています。
しかし、なぜボノボは身内よりもよそ者に惹かれてしまうような進化を遂げたのでしょうか?
研究者たちは、ボノボが生活している恵まれた生活環境が原因であると述べています。
ボノボの生活している森の環境は安定しており十分な食料が確保されています。
そのような環境下では他のグループと競争するよりも友好的に交流するほうが種の保存に役立ったと考えられます。
一方、初期人類の生活環境は厳しい草原地帯であり、限られた食料を他の人類グループと奪い合い、ときには殺害して競争から排除するなど、暴力的な手段が必要となっていました。
そのような状況では、見知らぬよそ者は自分たちの生存を脅かす危険因子に他ならなかった一方で、ともによそ者と戦う身内に対しては、強い愛着のバイアスを傾けるように進化したと考えられます。