新しい紙ストローは水に浸してもふやけない
新しい紙ストローは水に浸してもふやけない / Credit:Dongyeop X. Oh(KRICT)et al., Advanced Science(2022)
chemistry

水が染み込まない新しい紙ストロー

2023.02.05 Sunday

プラスチック廃棄物を最小限に抑えるため、紙ストローの導入が始まっています。

ところが、プラスチックのストローに慣れた人々からは、「すぐにふやける」「口触りが悪い」「使いにくい」といったネガティブな感想が溢れています。

使用感の良い紙ストローが求められているのです。

こうした需要に応じ、韓国化学研究院(KRICT)に所属するオ・ドンヨプ氏ら研究チームは、生分解性100%の「ふやけない紙ストロー」を開発することに成功しました。

研究の詳細は、2022年11月20日付の科学誌『Advanced Science』に掲載されました。

Development of 100% biodegradable paper straws that do not become soggy https://www.eurekalert.org/news-releases/978102 Finally, an anti-fizzing paper straw that doesn’t get soggy https://www.advancedsciencenews.com/finally-an-anti-fizzing-paper-straw-that-doesnt-get-soggy/
Biodegradable, Water-Resistant, Anti-Fizzing, Polyester Nanocellulose Composite Paper Straws https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202205554

従来の紙ストローはふやけてしまう

紙ストローはすぐにふやけてしまう
紙ストローはすぐにふやけてしまう / Credit:Canva

紙だけで作られるストローは、水分を吸ってすぐに使えなくなります。

そこで従来の紙ストローには、紙コップの仕様と同じく、ポリエチレン(PE)など非生分解性プラスチックのコーティングがなされていました。

当然、これらコーティングは完全に分解されず、マイクロプラスチックとして海に蓄積する恐れがあります。

「プラスチックを使わないために、プラスチックのコーティングを用いる」というのは、なんとも矛盾をはらんだ方法です。

そこで登場したのが、ポリブチレンサクシネート(PBS)などの生分解性プラスチックのコーティングです。

現在の紙ストローには、このPBSが採用されたものも存在しますが、コーティング能力が高くないため、完全な解決策にはなりえません。

紙への接着性が悪いため、どうしても不均一なコーティングになってしまい、そこから液体が侵入してしまうのです。

結局紙ストローは長持ちせず、ドリンクに浸した部分や口に咥えた部分からふやけてしまいます。

生分解性100%でふやけない紙ストローが求められる
生分解性100%でふやけない紙ストローが求められる / Credit:Canva

また露出した紙のザラザラな表面によって、炭酸飲料を飲むと泡立つというデメリットもあります。

ちなみに、紙ストローの代替品には、トウモロコシなどから得られるポリ乳酸を原料にした「PLAストロー」も存在します。

こちらは生分解性プラスチックであるものの、海洋生分解性プラスチック(海洋流出後も生分解性を有するプラスチック)ではないことが実験で確認されています。

では、「生分解性100%のふやけない紙ストロー」は存在しないのでしょうか?

オ・ドヨンプ氏ら研究チームは、人々の需要を満たした新しい紙ストローの開発に成功しました。

次ページ生分解性100%の「ふやけない紙ストロー」

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