道具ごとの「役割」をちゃんと理解して使っていた!
今回の研究では、以下の実験セットを使用しました。
透明な箱の中に、好物のナッツを設置。そのナッツと箱の穴の間に円形の紙の膜が塞いでいます。
そしてこれを取るための道具として長いストローと短く先の尖った木の棒が用意されています。
紙シートは固く尖った木の棒なら容易に破れますが、ストローでは破ることが出来ません。しかし木の棒は短すぎるため、ストローを使わないとナッツまで届きません。
オウムが報酬を得るには、まず先の尖った木の棒で紙シートを破り、そのあと細長いストローに持ち替えて穴に差し込み、奥のナッツを落とす必要があります。
道具を使ってナッツを落とすことができれば、斜めに設置した板をすべって、ナッツはケースの下の穴から出てきます。
このタスク成功には、道具ごとの役割を理解して正しい順序で計画的に扱わなければなりません。
そして10羽のシロビタイムジオウムを対象に実験した結果、なんと7羽が道具を適切な順序で使用しナッツを取り出すことに成功したのです。
さらに、そのうち2羽(フィガロとフィニ)は初見の試みにもかかわらず、わずか35秒以内でこのタスクを完遂し、研究者を大いに驚かせています。
次にチームは、オウムが状況に応じて柔軟に道具の使い方を変えられるかどうかを検証。
ここでは紙シートのある箱とない箱を別々に用意して、同じタスクを実施しました。
紙シートのある場合は2つの道具を組み合わせる必要がありますが、ない場合はストローだけで十分です。
実験の結果、一部のオウムは、片方の道具を手に取り、実験セットを見た後でそれを放して、もう片方の道具に持ち替えるというスイッチング行動を見せました。
これは目の前の状況に応じて、どちらの道具を使うべきかを正しく理解していることを示しており、スイッチングをしたオウムほどタスク成功率が高かったそうです。
これらを踏まえて、研究主任のアントニオ・オスナ=マスカロー(Antonio Osuna-Mascaró)氏は「オウムは人間やチンパンジーと同様に、複数の道具の用途を理解して、それらを複合的に使用できることが証明された」と述べています。
チームは最後に、オウムがどのように道具を持ち運ぶかどうかも調査。
2つの道具を少し離れた場所に置き、実験セットへは短いハシゴを登らせるか、垂直に飛び移らせるようにしました。
また実験セットは先と同様、紙シートのあるものとないものをランダムに提示します。
すると驚くことに一部のオウムは、紙シートのないセットを提示されるとストローだけを持ち運び、紙シートのあるセットを提示されると、半分に割られたストローの中に棒を収納して一つの道具として持ち運んだのです。
中には、必要な道具を間違えて何回か運搬を繰り返す個体もいましたが、この結果はオウムが目の前のタスクに必要な道具を理解していること、運搬の手間を省くために工夫ができることなどを示しています。
こちらが実際にオウムが道具を運ぶ様子です。
以上の結果は、オウムが霊長類に匹敵する相当な知能を持っていることを証明しています。
チームは今後、オウムの知能をさらに深掘りすべく、オウムの意思決定とメタ認知(自分の認知活動を客観的にとらえる能力)の仕組みについて調査を続ける予定です。