砂漠に生息する奇妙な生き物
砂漠に生息する奇妙な生き物 / Credit:Bäras(Wikipedia)_モロクトカゲ
biology

砂漠で生きる奇妙な生き物5選

2024.01.03 Wednesday

砂漠では日中は灼熱で、夜が極寒です。

加えて絶えず水が不足しており、生物が生息するには過酷すぎる環境だと言えます。

一時的な滞在ですら、ほとんどの動物には難しいでしょう。

ところが、そんな砂漠を故郷とする生き物たちが存在します。

彼らは過酷な砂漠に適応しており、生き続け、繁殖することができます。

ここでは、そんな砂漠に住む生物の中でも、特に奇妙な存在を紹介します。

15 strange desert animals https://www.livescience.com/strange-desert-animals

砂漠で生き抜く特殊な力を持つ生き物たち

デザートアイアンクラッドビートル

デザートアイアンクラッドビートル
デザートアイアンクラッドビートル / Credit:Greg5030(Wikipedia)_Asbolus verrucosus

ゴミタマムシの一種であるデザートアイアンクラッドビートル(学名:Asbolus verrucosusは、北アメリカのソノラ砂漠に生息しています。

高温環境に適応しており、昆虫の死骸や果実、植物などを食べて生きています。

鎧のような外骨格を持っており、その特徴的な青色はワックス状の皮膚によるもので、このコーティングが乾燥した砂漠において水分の損失を防いでくれます。

ちなみに、湿度が高いと、皮膚の青色が濃くなるのだとか。

約2cmという小さな体ですが、非常に頑丈で、人間に踏まれても平気だと言われています。

また脅威を感じると「死んだふり」をするため、「青い死んだふりをする甲虫」という名前でも知られています。

砂漠に似合わない「小さな青色の物体」を見かけたら、それはデザートアイアンクラッドビートルかもしれません。

雑食・頑丈・長寿かつ最小限の世話しか必要としないため、飼育しやすく、ペット業界で人気が高まっています。

サバクオオミミコウモリ

サバクオオミミコウモリ
サバクオオミミコウモリ / Credit:Charlotte Roemer(Wikipedia)_Desert long-eared bat

サバクオオミミコウモリ(学名:Otonycteris hemprichiiは北アフリカや中東の砂漠に生息するコウモリです。

大きくて長い耳と、白とライトグレーの被毛が特徴的であり、翼を広げると40cmほどのサイズになります。

植物がほとんど生えない地域に適応しており、岩の多い場所や水辺の近くを住処とします。

このサバクオオミミコウモリは、「世界一堅いコウモリ」と呼ばれることもあります。

それは、彼らが毒を持ったサソリと戦い、食べるからです。

その際、サバクオオミミコウモリはサソリの針で顔面を何度も刺されますが、その毒で苦しむような姿を見せません。

まるでサソリの針が皮膚を貫通していないかのように振る舞うのです。

とはいえ、実際は世界一堅いわけではなく、科学者たちは、このコウモリがサソリの毒に対して免疫を持っていると推測しています。

モロクトカゲ

モロクトカゲ
モロクトカゲ / Credit:Bäras(Wikipedia)_モロクトカゲ

モロクトカゲ(学名:Moloch horridus)は、オーストラリアの砂漠に生息する固有種です。

体長15cmほどの小型のトカゲですが、全身が鋭いトゲで覆われており、捕食者から身を守ることができます。

名前の由来は、ヘブライ語聖書に登場する生贄を要求するカナンの神「モロク(モレクとも言う)」です。

モロクは頭に角が生えた神として描かれており、これがモロクトカゲの頭部の大きなトゲと似ているのです。

またモロクトカゲの体は褐色のまだら模様であり、砂漠に紛れる保護色となっています。

首に突起(偽の頭)がある
首に突起(偽の頭)がある / Credit:Canva

さらに首の背中側には大きなこぶ状の突起があり、敵に飲み込まれるのを防ぐと考えられています。

加えてこの突起は、偽の頭としても機能します。

捕食者に威嚇されると、本物の頭を下げ、偽の頭をおとりにするのです。

モロクトカゲは水の少ない環境でも生き残ることができます。

なぜなら、全身の皮膚には細い溝が走っており、それらすべてが口へと繋がっているからです。

わずかな雨や霧で体が少し濡れるだけでも、口元へと水が集まるようになっています。

サハラギンアリ

サハラギンアリ
サハラギンアリ / Credit:Brookhaven National Laboratory

サハラギンアリ(学名:Cataglyphis bombycinaは、サハラ砂漠に生息するアリの一種です。

銀色に輝く絹のような被毛を持っており、これが太陽光(可視光線および近赤外線)に対して高い反射率を提供します。

また中赤外線領域でも放射性が高く、効率よく体から熱を排出できます。

これらの冷却効果により、サハラギンアリは「最も熱さに強い動物の1つ」と呼ばれています。

その名に違わず、サハラ砂漠の他の動物とは異なり、気温が70℃に達する日中でも採餌行動できます

それでも体温が高くなりすぎる前に採餌を済ませなければなりません。

そのためサハラギンアリは、毎秒855mm(時速3.1km)で高速移動します。

なんと1秒間に体長の108倍の長さを移動できるのです。

この比率を180cmの人間に当てはめると、毎秒200mで走っていることになります。

サハラギンアリは砂漠で生きるために、体を効率よく冷却し、アリの中で最も素早く移動していたのです。

キプリノドン・マクラリス

キプリノドン・マクラリス
キプリノドン・マクラリス / Credit:Paul V. Loiselle(Wikipedia)_https://en.wikipedia.org/wiki/Desert_pupfish

キプリノドン・マクラリス(学名:Cyprinodon maculariusは、体長7cmほどの小さな魚であり、アメリカで絶滅危惧種に指定されています。

現在は少数ながら、カリフォルニア州コロラド砂漠付近のソルトン湖(内陸の塩分濃度の高い水域)などに生息しています。

砂漠の貧弱な水源や水域で生き延びるために、特殊な適応力を持っています。

彼らはなんと40~45℃という熱いお風呂レベルの水温塩分濃度70ppm(普通の海は26~34ppm)の塩辛い水でも生きていられるのです。

また酸素濃度0.1ppmという低い溶存酸素量(水に溶け込んでいる酸素の量)にも適応します。

ほとんどの温帯魚が生きるために5ppmの溶存酸素量を必要とすることを考えると、キプリノドン・マクラリスが常軌を逸した存在だと分かりますね。

まさに過酷な環境で生きるための魚なのです。

この類まれな生存力にも関わらず、外来種の侵入により、絶滅の危機に瀕しています。

砂漠には特殊な生き物が潜んでいる
砂漠には特殊な生き物が潜んでいる / Credit:Canva

砂漠で生きる奇妙な生き物を紹介してきました。

どれも過酷な環境で生きるための特殊な体をもった生物ばかりでしたね。

砂漠には他にも多種多様な生物が住んでおり、そこからも「不思議で特殊な力」を発見できるでしょう。

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