片頭痛を15分で緩和する即効性の鼻スプレーをFDAが承認!
世界保健機関(WHO)によれば、米国では4000万人もの人々が片頭痛で苦しんでおり、脳の病気では脳卒中に次ぐ第2位の障害となっています。
日本でも成人の8.4%が片頭痛に悩まされているとされています。
片頭痛は頭痛の原因となる何らかの疾患がない状態で発生する頭痛の一種であり、発症すると日常生活に支障をきたし、生活の質を大きく損なう原因となってしまいます。
ただ厄介なことに、これまで片頭痛が起こる明確な仕組みは判明しておらず、有効な手立てが打てずにいました。
しかし2010年代になると、顔の神経(三叉神経)から分泌されるシグナル伝達物質(CGRP)が脳の血管を拡張させ、周りにある神経を圧迫することが、片頭痛の原因であることがわかってきました。
片頭痛のズキズキと脈打つような痛みが出るのも、血管の拡張に合わせて神経が圧迫されていたからと言えるでしょう。
そこで着目されたのが、血管を拡張させるスイッチ(CGRP受容体)の存在です。
このスイッチを何らかの方法で起動しないようにすれば、血管の拡張は起こらず、神経も圧迫されないため、片頭痛も起こらなくなります。
実際、これまでの研究でスイッチ起動を邪魔するような抗体薬が開発されており、片頭痛に対する有効な治療薬として各国で承認されています。
しかし抗体薬は基本的に体内に直接注射する必要があり、患者の負担が大きくなりがちでした。
そこで今回ファイザー社は、抗体薬のように血管拡張スイッチの起動を邪魔する機能を持ちながら、注射ではなく「鼻スプレー」で接種できる新薬を開発しました。
新たに開発された薬の主成分は「Zavegepant(ザベジェパント)」と呼ばれる低分子化合物であり、上の図のような構造をとっています。
第3相試験では1405人の片頭痛を患っている被験者たちを集め、半分に「Zavegepant(ザベジェパント)」を与え、もう半分にはプラセボが与えられました。
調査にあたって被験者たちは片頭痛を感じたら与えられた薬を使用し、時間経過ごとの状態を答えてもらいました。
結果、「Zavegepant(ザベジェパント)」を与えられた被験者たちは使用後最短15分から痛みの緩和が起きており、使用後最大48時間まで効果があるとわかりました。
副作用の報告に関しては味覚障害(21%)が最も多く、次いで鼻の不快感や吐き気(3~4%)となりました。
味覚障害の発生率の高さは若干気になりますが、即効性があり鼻スプレーの形で簡易に接種できる治療薬の存在は、片頭痛に悩む多くの人々を救うことになるでしょう。
ファイザー社は2023年7月を目途に、この片頭痛治療薬を「ZAVZPRET」という商品名で販売をはじめていく、とのこと。
もしかしたら数年後には日本でも承認され、病院で処方されるようになるかもしれません。