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Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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片頭痛を15分で緩和する「即効性の鼻スプレー」をFDAが承認!

2023.03.15 Wednesday

2023年の7月から販売されるようです。

米国に本部を置くファイザー社(Pfizer)は、片頭痛に対して即効性がある「鼻スプレー型」の治療薬が第3相試験を通過し、米国食品医薬品局から承認が得られたと発表しました

片頭痛はストレスなどによって血管が拡張し神経を圧迫することが主な原因となっています。

新たな治療薬の主成分「Zavegepant(ザベジェパント)」は血管の拡張を引き起こすスイッチ(CGRP受容体)が起動するのを邪魔(拮抗)する作用がある低分子化合物であり、結果として片頭痛の痛みを抑えることが可能になっています。

また即効性にも優れ、臨床試験では最短15分で痛みが緩和しはじめ最大48時間効果が持続することが示されました。

「Zavegepant」を主成分とする新薬は2023年の7月に「ZAVZPRET」という商品名でファイザー社から販売されるようです。

即効性のある新薬の開発は片頭痛に悩む多くの人々の「生活の質」を高める助けになるでしょう。

第3相試験の詳細は2023年3月に『THE LANCET Neurology』にて掲載されました。

Pfizer’s ZAVZPRET™ (zavegepant) Migraine Nasal Spray Receives FDA Approval https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizers-zavzprettm-zavegepant-migraine-nasal-spray
Safety, tolerability, and efficacy of zavegepant 10 mg nasal spray for the acute treatment of migraine in the USA: a phase 3, double-blind, randomised, placebo-controlled multicentre trial https://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(22)00517-8/fulltext

片頭痛を15分で緩和する即効性の鼻スプレーをFDAが承認!

片頭痛を15分で緩和する即効性の鼻スプレーをFDAが承認!
片頭痛を15分で緩和する即効性の鼻スプレーをFDAが承認! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

世界保健機関(WHO)によれば、米国では4000万人もの人々が片頭痛で苦しんでおり、脳の病気では脳卒中に次ぐ第2位の障害となっています。

日本でも成人の8.4%が片頭痛に悩まされているとされています。

片頭痛は頭痛の原因となる何らかの疾患がない状態で発生する頭痛の一種であり、発症すると日常生活に支障をきたし、生活の質を大きく損なう原因となってしまいます。

ただ厄介なことに、これまで片頭痛が起こる明確な仕組みは判明しておらず、有効な手立てが打てずにいました。

しかし2010年代になると、顔の神経(三叉神経)から分泌されるシグナル伝達物質(CGRP)が脳の血管を拡張させ、周りにある神経を圧迫することが、片頭痛の原因であることがわかってきました。

三叉神経が片頭痛の原因であるとわかったことで、治療薬の開発が加速しました
三叉神経が片頭痛の原因であるとわかったことで、治療薬の開発が加速しました / Credit:香川県立中央病院

片頭痛のズキズキと脈打つような痛みが出るのも、血管の拡張に合わせて神経が圧迫されていたからと言えるでしょう。

そこで着目されたのが、血管を拡張させるスイッチ(CGRP受容体)の存在です。

このスイッチを何らかの方法で起動しないようにすれば、血管の拡張は起こらず、神経も圧迫されないため、片頭痛も起こらなくなります。

実際、これまでの研究でスイッチ起動を邪魔するような抗体薬が開発されており、片頭痛に対する有効な治療薬として各国で承認されています。

しかし抗体薬は基本的に体内に直接注射する必要があり、患者の負担が大きくなりがちでした。

そこで今回ファイザー社は、抗体薬のように血管拡張スイッチの起動を邪魔する機能を持ちながら、注射ではなく「鼻スプレー」で接種できる新薬を開発しました。

「Zavegepant(ザベジェパント)は先行する片頭痛薬のように抗体ではなく低分子化合物となっています
「Zavegepant(ザベジェパント)は先行する片頭痛薬のように抗体ではなく低分子化合物となっています / Credit:wikipedia

新たに開発された薬の主成分は「Zavegepant(ザベジェパント)」と呼ばれる低分子化合物であり、上の図のような構造をとっています。

第3相試験では1405人の片頭痛を患っている被験者たちを集め、半分に「Zavegepant(ザベジェパント)」を与え、もう半分にはプラセボが与えられました。

調査にあたって被験者たちは片頭痛を感じたら与えられた薬を使用し、時間経過ごとの状態を答えてもらいました。

結果、「Zavegepant(ザベジェパント)」を与えられた被験者たちは使用後最短15分から痛みの緩和が起きており、使用後最大48時間まで効果があるとわかりました。

副作用の報告に関しては味覚障害(21%)が最も多く、次いで鼻の不快感や吐き気(3~4%)となりました。

味覚障害の発生率の高さは若干気になりますが、即効性があり鼻スプレーの形で簡易に接種できる治療薬の存在は、片頭痛に悩む多くの人々を救うことになるでしょう。

ファイザー社は2023年7月を目途に、この片頭痛治療薬を「ZAVZPRET」という商品名で販売をはじめていく、とのこと。

もしかしたら数年後には日本でも承認され、病院で処方されるようになるかもしれません。

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