卵黄を加えることはメリットだらけだった
研究チームは、オールド・マスターたちが使用した種類の油絵具に卵黄を加えて、その性質がどのように変化するかをテストしました。
実験では、顔料と油を混ぜた普通の油絵具と、油絵具に卵黄を混ぜたものの2種類を作製。
これらの絵の具を使って実際と同じようにペイントを行い、水分量や粘度、乾燥するまでの時間、酸化度などを測定しました。
ただ詳しく分析する前に、卵黄を混ぜた絵の具には明らかな違いがすぐに表れたそうです。
通常の油絵具は粘度の低いサラサラした状態を保つのに対し、卵黄を加えた方は粘度が高まり、マヨネーズに似た質感に変わりました。
こちらが両者の粘性を比べた40秒ほどの動画です。
そして卵黄を混ぜることで油絵具には数多くのメリットがあることが判明しました。
まず、卵黄で粘性が高まったことからも分かるように、顔料の粒子同士の結合が強くなり、より硬い絵具になっています。
これは油絵に特有の、力強い厚塗りで立体感を出す技法の「インパスト画」に最適です。
また通常の油絵具では、塗った後に表面から順番に乾いていくことでシワが生じやすいのですが、卵黄を混ぜるとそれが防がれ、乾燥後のシワが出来にくくなっていました。
そのおかげで画家のイメージ通りの絵を保つことが可能となるのです。
たとえば、レオナルド・ダ・ヴィンチの油彩『カーネーションの聖母』には卵黄が使われておらず、聖母マリアの顔に無数のシワが残ってしまっています。

専門家によると、この油彩はレオナルドが20歳を過ぎた頃の初期作品で、当時まだ普及し始めたばかりの油絵具を使いこなすのに苦労していた時期の一作だという。
そのため、レオナルドも「油絵具に卵黄を混ぜるとシワが出来にくくなる」ことを知らなかったのでしょう。