「かわいい」が広がっていく理由
人が何かを「かわいい」と感じるのは本来自らの子孫を守るようにするためです。
しかし、万が一自分の子孫を「かわいい」と感じ取れず庇護できなければ子孫を残すことができなくなります。
これは「かわいい」という感情を抱く重要なメリットです。
また、自分以外の子孫を「かわいい」と感じるように、「かわいい」の対象が広がったとしても特にデメリットは生じません。
むしろコミュニティにおいて、共に子供を守っていく方向に意識が働いていくため、「かわいい」範囲は広がれば広がった分だけ、集団のリスクは少なくなります。
また、「かわいい」の対象を子供だけでなく、お年寄りに向けることも同様にその対象を守り共に生きていく意識を高めます。
このため、社会性を持つ人間の脳は「かわいい」と思える範囲が広くなる方向へと進化が進んだと考えられるです。
さらに「かわいい」は基本的に無害と判断した対象に向けられるため、それが共存の意思と連動していくパターンも考えられます。
例えば深海魚のような一見不気味な対象でも「かわいい」と表現されたり、間抜けな行動をする生き物を「かわいい」と表現することがありますが、これはその対象が無害だから共存したいという感覚で飛び出してくる可能性があります。
また単に無害な対象なら、料理などもかわいくて良いはずですが、料理自体を「かわいい」とはなかなか言いません。
しかしスイーツに対しては「かわいい」と表現されることがあります。ここには「見続けたい」という感情が絡んでいると推測できるようです。
そしてこれらの拡張された「見続けたい」「共存したい」という感覚から、「かわいさを広めたい」という欲求へ繋がるようになったと考えられます。
前述の入戸野氏は「『かわいい』と感じた人は高確率で笑顔になり、その「かわいい」笑顔を見た人々もまた笑顔になる」という現象を「かわいい」スパイラルとして紹介しています。
そう考えると「かわいい」対象がどんどん幅広くなっていくことは、人間の幸福度を上げることにもつながっていくのかもしれません。