メラトニンにはどんな効果がある?
メラトニンは脳内の松果体から分泌されるホルモン物質の一種です。
睡眠や体内時計を調節する作用があり、日光などの光刺激が多い昼間はメラトニンの分泌量が低く、光刺激が弱まる夜間は分泌量が増えます。
メラトニンには入眠を促す効果があるため、寝る前にメラトニンを摂取すると寝つきが良くなることが示されています。
ただし、不眠症を改善するほどの強い効果はありません。
アメリカではすでに睡眠薬としてドラッグストアなどで市販されていたり、メラトニンを含有するグミや錠剤として売られています。
日本では医薬品としてのみ承認されていますが、メラトニンサプリの市販はまだ承認されていません。
しかし、メラトニングミや錠剤は海外から個人輸入で安く簡単に入手できます。
一方で、アメリカでは子供たちが就寝前にメラトニングミを一粒食べる習慣が広く浸透しているそうです。
メラトニンはそれほど強い作用がないので、小さな子供の脳が心地よく眠りにつくのを手助けする安全な方法と考えられています。
メラトニングミを日常的に摂取している子供の数は正確には分かっていませんが、コロナのパンデミック以前から増加傾向にあり、2013年〜2016年の間だけでも22%増加していました。
識者によると、コロナ禍の生活習慣の変化で、その数はさらに増加の一途をたどっているといいます。
ラベルに記載されているメラトニン含有量はウソ?
しかし研究チームはこのほど、メラトニングミに関する懸念すべき事実を発見しました。
アメリカで市販されている25種類のメラトニングミを対象に、ラベルに記載されているメラトニンの含有量と、実際にグミに含まれているメラトニン量を調べてみたのです。
すると、ほとんどのブランドが記載量を偽っており、中にはその3倍以上のメラトニンを含むグミもあることが明らかになりました。
研究者によると、メラトニンの摂取量は5〜15歳の子供には一度に1〜5mgが推奨されており、調査対象としたブランドの大部分も1食分あたり3〜5mgで、1回に2個まで食べてよいことが記載されています。
ところが25種中22種は表示内容が不正確であり、3mg表記のメラトニン量が実際は10mg含まれていたり、最も多い場合は13.1mgも含まれていたのです。
反対にメラトニンがまったく含まれておらず、プラシーボ(偽薬)状態になっているものもありました。
これまでの研究で、メラトニンの過剰摂取は頭痛や吐き気、めまい、腹痛などの症状を引き起こすことが示唆されていますが、現にアメリカの子供たちに健康被害が出ているかどうかは不明です。
また専門家の中には「メラトニンを1回に10mg摂取した程度では、それほど健康に影響はない」とする意見もあります。
というのも成人のボランティアを対象とした先行研究では、1回に100mgのメラトニンを摂取させても副作用が起きなかったからです。
その理由の一つとして、代謝されなかったメラトニンは尿として比較的スムーズに体外に排出されることが挙げられています。
ただし過剰摂取が長期間に渡ったり、体の発育が不十分な子供では悪影響が出てもおかしくありません。
メラトニンの短期服用は基本的に安全とされていますが、もし日本でもメラトニングミの市販が始まるのなら、ラベル表示と実際量の問題はクリアにしておく必要があるでしょう。
メラトニンは体内時計を調整する働きがあるとされるため、飛行機の長距離移動で利用するのは有効かもしれません。
メラトニングミは比較的自然な入眠を促せるようなので、佐々木選手のように有名人の利用を聞くと自分でも試したくなる人も多いでしょう。
しかし、現在米国で販売されているメラトニングミは、含有成分に関する表記がかなりいい加減であることが論文で指摘されているため、個人輸入などで使用を検討している人は注意する必要がありそうです。