胃の電気刺激で食欲不振を解消する
がん患者の多くは、精神的なストレスや抗がん剤治療の影響で、食欲不振や吐き気が続く場合があります。
体は栄養を必要としているのに、どうしても食事することができない場合があるのです。
研究チームは、こうした患者をサポートするために、食欲不振を解消する方法を探ってきました。
今回彼らが注目したのは、胃で分泌される食欲ホルモン「グレリン」です。
グレリンは空腹感を促進し、吐き気を軽減することで知られており、通常は私たちの胃が空っぽの時に分泌されます。
ところが病気などが原因で、これらの反応が低下し、食欲がなくなることがあります。
研究チームはこれまでの研究から、胃を電気で刺激することで、グレリンの分泌を促進させられると考えました。
そして動物の胃に電極を使って電気刺激を与える実験では、20分の刺激の後、血中グレリン値がかなり上昇しました。
しかも電気刺激による重大な炎症やその他の悪影響は見られませんでした。
ただし、電極で胃の内側を刺激する方法を人間に適用するのは簡単ではありません。
ペースメーカーのような電気刺激デバイスを埋め込む方法もありますが、外科手術が必要であり、患者の負担も大きくなります。
そこでチームは、飲み込むだけで作用する「電気刺激カプセル」を開発することにしました。
ところが、この方法には1つの大きな課題があります。
それは胃の内側を覆っている胃粘液などに邪魔され、カプセル上の電極が胃組織に接触しにくいというものです。
カプセルが確実に電気刺激を与えるには、胃をコーティングする粘液を取り除かなければいけないのです。
そこで研究チームが着目したのが、砂漠に住むトカゲの皮膚にある表面構造でした。