鼻の高さは「寒さを生き抜く」ために必要
人間の鼻はどんな形でもいいわけではなく、住む場所の環境に応じて適切な形状があります。
たとえば、赤道付近や高温多湿の暑い地域に住む人々は、総じて鼻が短くて低く、幅広な傾向が強いです。
これは鼻の穴が幅広に大きくなるほど、熱を外に逃しやすくなるからとされています。
他方で、高緯度の寒い地域では、鼻が長くて高い人々が圧倒的に多いです。
ここには低温で乾燥した空気を温め、加湿する役割があります。
冷たく乾いた空気は鼻の穴を通るときに、内側の粘膜によって湿気が加えられ、また粘膜に流れてくる血液により温められます。
鼻が高くて長い方が加湿や加熱の効果は大きくなり、冷たい空気が直接肺に流れ込むことを回避できるのです。
よって、寒い地域では高くて長い鼻が、暑い地域では低くて短い鼻が自然選択されやすくなると考えられます。
ネイティブアメリカンも寒さに適応するために”鼻高DNA”を発現した?
では、ネイティブアメリカン系に鼻を高くする遺伝子が強く残っている理由とは何でしょうか?
それはネイティブアメリカンの出自に関係していると予想されます。
彼らの祖先はモンゴロイド(東アジア・東南アジア・南北アメリカなどに分布)であることが分かっており、その一群が約2万5000年前にアジアからシベリアに進出しました。
そこからベーリング海を渡って北アメリカ大陸に入り、ネイティブアメリカンとなったのです。
当時は最終氷期の最盛期に当たり、シベリアや北アメリカの寒さは極めて厳しいものでした。
おそらく、その過酷な寒さを生き抜くためにネアンデルタール人由来の”鼻高DNA”が自然選択されて、ネイティブアメリカンのうちに残ったのでしょう。
一方でネアンデルタール人のDNAは他にも、アフリカ以外に住む現代人の50%が持っており、日本人も約30%が保有していると言われています。
ただ今回の調査はヨーロッパやアジアに住む人々を直接的な対象としておらず、ネアンデルタールの遺伝子がどれだけ発現しているかどうかも不明です。
もしあなたの鼻が他の人に比べて異様に高ければ、ネアンデルタール人のDNAを受け継いでいる証拠かもしれません。