ネアンデルタール人は現代人に比べて鼻が長くて高かった
ネアンデルタール人は約40万年前に登場し、ヨーロッパを中心としながら、西アジアや中央アジアまで広がっていました。
一方のホモ・サピエンス(現生人類)は約20〜30万年前に誕生し、その一部がアフリカを飛び出したのは約6〜7万年前です。
そこからヨーロッパやアジア、シベリアへと拡散する中で、ネアンデルタール人と遺伝的に交配したと推測されています。
研究主任のカウストゥフ・アドヒカリ(Kaustubh Adhikari)氏は「ここ15年間でネアンデルタール人のゲノム解読が大きく進展し、現代人の祖先が彼らと交配して、そのDNAの幾つかを私たちのうちに残していることが明らかになってきた」と話します。
ただ、そのDNAが現代の私たちにどんな影響を与えているのかはよく分かっていません。
![左:ホモ・サピエンス(現生人類)、右:ネアンデルタール人](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2023/05/nose-shape-gene-inheri-739x600.jpeg)
しかし頭蓋骨の分析から、ネアンデルタール人と現生人類では顔のかたちが著しく異なり、特に鼻の高さ(付け根から鼻先までの長さ)に大きな違いがあることが分かっています。
ネアンデルタール人の鼻は私たちに比べて異様に高くて長かったのです。
そこで研究チームは、その遺伝的影響が現代人に現れているか調べることにしました。
ネイティブアメリカン系に”鼻高DNA”が強く現れていた
今回の研究は、中南米の5カ国(ブラジル・コロンビア・チリ・メキシコ・ペルー)に在住するヨーロッパ系、ネイティブアメリカン系、アフリカ系の祖先を持つ6486人を対象としました。
参加者の遺伝子データと顔写真の点間距離(下図)を比較し、顔の特徴と遺伝子マーカーがどう関連しているかを分析します。
![顔の点間距離と遺伝子データを比較](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2023/05/6e1d2d21c38de4e702c8c93ee5653c5a-900x405.jpg)
その結果、顔のかたちに関連する33カ所のゲノム領域が新たに発見されました。
そしてネイティブアメリカン系の祖先を持つ人々は、ATF3と呼ばれるゲノム領域にネアンデルタール人由来の遺伝子が多く見つかり、さらに他のグループと比べて鼻が高い傾向にあることが判明したのです。
これはネアンデルタール人特有の鼻の高さが、遺伝的な形質として発現していることを示しています。
加えて、ATF3領域には「自然選択(生存に有利な形質が子孫に伝わり、不利な形質は捨てられる現象)」の兆候が見られ、鼻の高さが祖先たちに生存の優位性を与えていることが示唆されました。
では、鼻を高くすることにどんなメリットがあるのでしょうか?
またネイティブアメリカン系に、ネアンデルタール人の”鼻を高くする遺伝子”が強く残ったのはどうしてでしょう?