IQが高い人ほど難しい問題に「時間をかける」と判明!
昔から頭の良さの指標に「難しい問題でも即座に答えに辿り着く」ことが含まれていると信じられていました。
フィクションでも、凡人がいくら時間をかけても解けなかった難問を、颯爽と現れて「即座に答える」天才が登場することがあります。
IQテストをはじめ多くの知能を図るテストも、制限時間内により多くの問題に応えることで、高成績を収められるようになっています。
また多くの人々は素早い意思決定ができる人は有能とみなす一方で、考え込む時間が長い人は「消極的」「無能」とみなしがちになります。
しかし意外なことに「知能の高さ」と答えを出す「意思決定のスピード」そして「答えの正しさ」の3つの関連性を調べた研究は少なく、本当に意思決定の早い人が知能が高く答えが正確なのかは、実は不明となっていました。
そこで今回、シャリテ・ベルリン医科大学の研究者たちは、IQが判明している650人の被験者たちの脳活動をMRIで測定しながら、「簡単な問題」から「難しい問題」までさまざまな問題を解いてもらいました。
ここで言う「簡単な問題」とは「赤信号なら車は止まるべきか?」といった、知能に関係なく時間さえかければ誰でも必ず正解に辿り着けるものです。
一方「難しい問題」は脱出ゲームや論理パズルのように論理と推論の構築が必要とされ、単に時間をかけるだけでは答えに辿り着けず、地道に検証プロセスをすすめなければならない、「脳が疲れる問題」となっています。
さらに難しい問題には往々にして、一見すると飛びつきやすい、誤った「引っかけ」も存在していました。
それでも既存のイメージ通りならば、知能(IQ)が高い人は、難しい問題でも素早く正しい答えを出してくれるはずです。
しかし結果は違いました。
実験を行ってみると、IQが高い人は時間さえあれば誰でも正解するような「簡単な問題」を素早く答えることは得意でした。
しかし「難しい問題」ではIQが高い人は低い人よりも、答えるのに長く時間がかかっており、代わりに正答率が高いことが判明します。
一方、IQが低い人は「簡単な問題」を答えるのに多くの時間を要したものの「難しい問題」はIQが高い人よりも短時間かつ「低い正答率」で、誤った引っかけを選んでしまう傾向にありました。
この結果は、簡単な問題にかんしては既存のイメージ通り頭が良い人が素早く答えに辿り着くものの、難しい問題では頭がいい人ほど時間をかけて、より正しい答えに辿り着くことを示しています。
また難しい問題の答えを早急に下してしまう人は、答えが間違っているだけでなく、知能も低い可能性が高いことを示します。
フィクションの世界では、難問を一瞬で解いてくれる天才は、強敵を一撃で倒すヒーローのような頼もしさがあります。
しかし現実では、知能の高い人ほど難題には時間をかけ、少しずつ正解に近づいていくようです。
そのため、もし知能が高い優秀な人材を集めているならば、難しい問題に即座に答えを見つけてしまう人より、時間をかけて挑むジックリ型の人を探すといいでしょう。
ただ今回の研究で本当に凄いのはここからになります。
研究ではなんと「IQが高い人が難問に時間をかけて正解するとき」そして「IQが低い人が難問に即座に間違った答えを出すとき」それぞれ脳内で何が起きているかが調べられ、知能の正体に迫っているのです。
知能の本質とは、いったい何だったのでしょうか?