宇宙でも揚げ物が食べられると判明!
カラパンシオス氏ら研究チームは、「宇宙では揚げ物を作ることができないかもしれない」と考えました。
なぜなら、地球上では食材から出た水蒸気の泡が浮力によって引き上げられるが、微小重力環境では、水蒸気の泡が食材の表面に付着して、食材全体を蒸気の層で覆ってしまうかもしれないからです。
このように水蒸気が食材から剝がれない場合、水分と油の入れ替わりが起こらず、表面から水分を十分に抜くことができなくなると考えられます。
とはいえ、実際に確かめてみなければ、どうなるか分かりません。
そこで研究チームは、微小重力環境を作り出し、実際に揚げ物(フライドポテト)ができるか実験することにしました。
彼らは航空機に放物線飛行を行わせ、その内部で短時間の微小重力環境を生み出しました。
ジェットコースターの頂点では、自分の内臓が浮かんでいるような感覚になりますが、これは無重力に近い状態になっているからです。
同様に航空機でも放物線運動を行うように操縦すると、短時間ですが無重力に近い状態が作り出せるのです。
チームはこの効果を利用して、航空機の中に実験用装置を設置。
装置(容器)の中に加熱した油とジャガイモを入れました。
そして装置内の様子を高解像度のハイスピードカメラで撮影し、ジャガイモから出る水蒸気の泡のサイズや分布、速度や進行方向などを記録しました。
ちなみに実験用装置は安全のために圧力が一定に保たれており、油の漏れや飛び散りを防止しています。
実験の結果、地球上と同じく、水蒸気の泡はジャガイモの表面から簡単に剥がれることを発見しました。
実験装置内を記録した動画でも、水蒸気の泡がジャガイモの表面から放出され、しっかりと分離されている様子を確認できます。
揚げ物中の水蒸気の生成は、重力加速度レベルに依存しない可能性があると言えるでしょう。
そして最終的には、しっかりとフライドポテトが完成しました。
このことは宇宙のような微小重力環境でも揚げ物ができることを証明しています。
宇宙船の中でも、宇宙ステーションの中でも、地球以外の惑星でも、揚げ物を食べることは可能なのです。
食材の調達や調理の難易度の高さなどから、宇宙での揚げ物が実現するのはまだ先ですが、揚げ物が大好きな人にとっては大きな希望となりました。
最後に研究チームは、「宇宙での揚げ物のプロセスを研究することは、従来の沸騰から微小重力下での太陽エネルギーによる水素製造まで、様々な分野の進歩に繋がります」と結論付けています。
今回の研究が水素製造などを見据えたものだったのか、それとも単に「何とかして宇宙でも揚げ物を食べたい」という願望が突き動かしたものだったのかは分かりませんが、いずれにしても揚げ物には地球を越えたポテンシャルがあるようです。