現代の若者にとって「結婚=幸せ」ではなくなっている?
チームは今回、マレーシアに住んでいる18歳〜24歳の独り身の若者、延べ232人(女性139人、男性93人)を対象に調査を行いました。
この年齢層を選んだのは、フラティズムが主に1990年代半ば〜2012年頃に生まれた「Z世代」を中心に受け入れられているためです。
調査では、フラティズムに肯定的か否定的か、恋愛と結婚に対する価値観やそこから得られる幸福度、独身でいることへの不安など、さまざまな項目でアンケートを実施。
そしてデータ分析の結果、フラティズムに肯定的だった若者ほど「恋愛関係がなくても、充実した幸せな生活を送ることができる」という質問に同意する傾向が強いことが分かったのです。
さらに「独身でいることに幸せを感じる」「恋愛や結婚に従事することは幸福な人生にとって重要ではない」という質問にも強く同意していました。
以上の結果から、フラティズムを抱く若者たちは、もはや幸せな人生を築く上で恋愛や結婚は必ずしも必要ではないと考えている可能性が高いことが示されました。
これを受けて研究者らは「現在のフラティズムの人気の高まりにより、今後さらに独身を貫く若者が増える傾向が高まるでしょう」と指摘します。
しかし、これは「若者が自分たちの自由意志で選んでいるだけ」という単純な理由では説明できないかもしれません。
というのもフラティズムの背景には、懸命に働いても賃金が上がらないとか、安定した雇用が得られないといった社会の問題が大いに関係しているからです。
それを踏まえて研究者は「結婚率や出生率の低下に対処するには、社会の側から若い世代をサポートすることが極めて重要である」と論文内で述べました。
一方で、フラティズムに関する研究はまだ始まったばかりです。
フラティズムの増加が社会にもたらす実際的な影響や、あるいはフラティズムの若者とそうでない若者との間の幸福度の違いなど、調べることは多岐に渡ります。
その中で、研究主任のチー・セン・タン(Chee-Seng Tan )氏は「若者たちの選択を尊重しながら、フラティズムに対する認識を深めていきたい」と話しています。
フラティズムという用語は、中国の若者たちの抗議活動から来てますが、この思想自体は現代の若い世代を中心に自然と広がっている一般的な考え方でしょう。
日本社会でも少子化や未婚率の上昇は問題にされていますが、それは単純な社会保障などで解決するものではなく、より根深い現代の人々の価値観や人生観の変化の意味を理解しなければならない問題なのでしょう。