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政治の分極化は国の発展度合いが高いほど50:50になる

2026.02.14 21:00:29 Saturday

「話が通じない」「まるで別の世界に住んでいるようだ」——。

近年、SNS上の議論や選挙戦を通じて、自分とは異なる政治的意見を持つ人々との間に、埋めがたい溝を感じることはないでしょうか。

社会が真っ二つに割れる「政治的分極化(二極化)」は、現代社会における深刻な懸念事項となっています。

多くの人は、その原因を「インターネットやSNSの普及によって、極端な意見ばかりが増幅されるエコーチェンバー現象が起きたからだ」と直感的に考えています。

しかし、その捉え方は正しいのでしょうか?

英国・ケンブリッジ大学(University of Cambridge)心理学部のデビッド・ジャック・ヤング(David Jack Young)氏らの研究チームは、この現代的な難問に対し、人間の主観的な「政党支持」のレッテルではなく、実際の政策に対する膨大な回答データを機械学習(k平均法のクラスタリング)で解析するという新たなアプローチで挑みました。

すると、米国社会における分断は、2008年頃を境に急激に進行しており、また思想のパッケージ化(陣営ごとに異なるテーマで回答パターンが揃う傾向)が起きていることが示されたといいます。

また、研究チームは国際比較を行った結果、分断の進行はインターネット普及率では一貫した説明ができず、むしろ関連が疑われるのは「人間開発指数(HDI)」の高さだったという。

HDIは、健康・教育・所得などをまとめて見た国の発展度合いの指標で、途上国ほど低HDIの傾向がありますが、研究は低HDIの国ほど分断が起こらず一党独裁のような状態に近づくと述べています。

これは何を意味するのでしょうか?

この研究の詳細は、2026年2月4日付けで英国王立協会の科学雑誌『Royal Society Open Science』に掲載されています。

A new measure of issue polarization using k-means clustering: US trends 1988–2024 and predictors of polarization across the world https://doi.org/10.1098/rsos.251428

「分断」は本当に起きているのか?

「トランプ支持か、反トランプか」「共和党か、民主党か」——。

アメリカの大統領選のたびに、国が真っ二つに割れ、友人や家族ですら政治の話ができなくなる……というニュースは日本でも目にすることが増えました。

この「アメリカ社会の分断」は、私たちにとっても既視感のある光景ですが、実は現地の専門家の間では、これが「本当に人々の仲が悪くなった(分断した)」のか、それとも単なる「データの見え方の問題(錯覚)」なのかという、根本的な議論が続いていました。

なぜ、あの激しい対立が「錯覚」だと言われるのでしょうか? その原因は、政治学で「党派的配列(ソーティング)」と呼ばれる現象にあります。

かつてのアメリカには、「保守的な考えを持つ民主党員」や「リベラルな考えを持つ共和党員」といった、個人の思想と支持政党が一致していない「ねじれた」人々が多く存在しました。当時は、個人の政治的なスタンス(イデオロギー)よりも、住んでいる地域や家族の伝統といった歴史的な理由で支持政党が決まることが多かったためです。

しかし時代が進むにつれ、各政党の方針が明確になり、人々は自分の考えに合った政党を支持するようになりました。「自分は保守的な考えだから、民主党ではなく共和党に行くべきだ」と、思想と所属の不一致を解消し始めたのです

ここが重要なポイントで、人々の意見そのものが過激化していなくても、この「ソーティング(選別)」が完了すると、共和党は「純粋な保守」、民主党は「純粋なリベラル」の集まりになり、中身の人間が整理整頓されただけなのに、従来のデータ分析では「政党間の距離が急激に開いた(分断が進んだ)」かのように見えてしまう可能性があるのです。

主義主張だけで塊を作るとどうなるのか?

そこで今回の研究チームは、この問題を解決するために、人々の自称する支持政党は一切無視することにしました。

代わりに、アメリカ全国選挙調査(American National Election Studies, ANES)の複数年のデータを使い、政策に関する設問から14項目を選別して、14個それぞれの争点について分析したのです。

ここで行われた分析は簡単に言うと、各人の政策回答を「意見の地図」の上に配置し、機械学習(k-means法)を用いて地図上で似た回答の人が固まる場所を探し出して2つの塊(クラスター)に分け、その2つの塊が年を追ってどれだけ離れたかを見るというものです。

イメージしやすい例えで考えるならば、ある広場に集まった人に、「中絶は反対か? 賛成か?」を訪ね、その意見の強さで右か左に移動してもらったとします。

そしてその人達はどちら側にいるかで2つの塊にわけて線を引き、人の多いポイントをグループの中心点とします。それぞれのグループの中でも「まあ、ケースバイケースだよね」という穏健な意見の人は中心に近い場所に立っていますが、「どちらかと言えば反対だな(賛成だな)」という人の集まりが増えて少しずつ左右に広がっていくと、集団の中心点は離れていくことになります。

研究チームは、この「距離」を税金や同性婚など14個のテーマすべてについて計算し、総合的なスコアを出しました。 つまり、あらゆる話題において、二つの集団の距離(意見の重心)がどのくらい離れているかを数値化したのです。

もし人々の意見は昔と変わっておらず、意見ごとの棲み分けが進んだだけで、「分断」が錯覚(ソーティングの影響)に過ぎないなら、純粋な意見だけで作ったグループ間の距離は、昔と変わらないはずです。 しかし、結果は違いました。

分断が加速したのは「2008年」から

1988年から2024年までのアメリカ全国選挙調査(ANES)のデータを分析した結果、明確な傾向が浮かび上がりました。

まず、政策に対する意見に基づくグループ間の距離、すなわち「分離(Separation)」は、この約40年間で着実に拡大していました。

しかし、その変化は一定のペースで進んだわけではありませんでした。

データによれば、1988年から2008年頃までは、分断の度合いは比較的横ばいの状態が続いていて、あまり変化していませんでした。

ところが、2008年から2020年にかけて、意見の異なるグループ同士の距離は急激に広がり、社会的な合意形成が困難な状態へと突き進んでいたのです。

一方で、興味深いことに、各グループ内部の意見のばらつき具合を示す「散らばり(Dispersion)」には大きな変化が見られませんでした。

ここから考えられることは、集団の中には相変わらず穏健な人もいれば強硬な人もいて、意見の幅は広いままですが、集団全体の位置(平均的なスタンス)が互いに遠ざかってしまったため、かつては重なり合っていた「真ん中の共有スペース」が消滅してしまった可能性です。

次ページ意見の「パッケージ化」と中間層の空洞化

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