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政治の分極化は国の発展度合いが高いほど50:50になる (2/2)

2026.02.14 21:00:29 Saturday

前ページ「分断」は本当に起きているのか?

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意見の「パッケージ化」と中間層の空洞化

このような状況が生じた背景について、論文は「意見のパッケージ化」という表現で説明しています

昔はバラバラだった意見がセットになり、「Aについて保守なら、BについてもCについても保守」という状態が生じており、異なるグループ間で、「どの話題についても合意できない」断絶が起きやすくなっている可能性があるというのです。

誰にでもこだわりのあるテーマと、特に興味のないテーマというものがあります。

例えば、ある人が「経済政策」で保守的な立場をとっていても、「中絶」や「環境問題」についての意見はケースバイケースで曖昧な意見しかないということは珍しくありません。

しかし、研究結果は、この傾向が近年変化していることを示していました。

現代では、「経済で保守的な立場をとる人は、中絶や銃規制といった文化的・社会的な課題に対しても、高い確率で保守的な立場をとる」というパターンが固定化されつつあったのです。

これは保守やリベラルの人たちの意見が極端に過激化したというよりも、グループ全体が「すべての議題で特定の傾向を示す」ようになったため、かつては存在した「経済では対立するが、文化では合意できる」といったグループ間の意見の重なりが構造的に減少し、合意形成が困難になっている可能性を示唆しています。

インターネット普及率と分断の複雑な関係

では、何がこのパッケージ化を加速させたのでしょうか?

2008年以降、分断が激化しているというデータ的背景と、意見のパッケージ化という現象を併せて考えると、直感的に思い浮かぶのは、スマートフォンの登場やSNSの普及による影響でしょう。

しかし、この研究では、この直感に対して慎重な見方をしています。

研究はアメリカのケースだけでなく、世界57カ国において、同様に社会の分断(グループ間の距離やサイズの不均衡)を分析していますが、インターネットの普及率(人口あたりの利用者数)と、各国の社会の分断との間には、一貫した統計的な関連性が確認されなかったのです。

国の豊かさなどの要因を考慮して補正を行うと、むしろネットの普及が分断とは逆の傾向を示すケースさえありました。

この結果は、「ネットの普及だけが、社会を分断した要因ではない」可能性を示唆してます。

とはいえ、研究者はこの結果をもって「インターネットは無関係である」と断定するべきではないという慎重な姿勢を取っています。

米国において分断が急激に加速した2008年から2020年という時期は、まさにSNSの普及期と重なっています。

インターネットの「普及率(量)」自体が相関しているように見えないとしても、この大雑把な値だけでは読み取れない背景が潜んでいる可能性はあり得ます。

SNS特有の機能である「エコーチェンバー現象」(自分と似た意見ばかりが表示され、異なる意見が見えなくなる環境)などが、前述した「意見のパッケージ化」を促進し、対立を深めるための効率的な「環境」として機能した可能性は残されており、複合的な要因の一つとして捉える必要があるでしょう。

ただ、今回の研究はインターネット普及率よりも、もっと相関性の高い指標も発見しています。

「豊かさ」が生む構造的な対立

インターネット以上に、本研究が分断の構造的な要因として関連を見出したのが、国の発展度合いを示す「人間開発指数(HDI)」です。

これは単なる経済指標ではなく、「健康(平均寿命)」「教育(就学年数)」「所得(生活水準)」という3つの要素を組み合わせて算出される、その国の社会的な成熟度を測る指標で、一般的に途上国ほど低く、先進国で高くなる傾向があります。

論文では、政治学者イングルハートらの近代化理論を引用し、HDIの上昇が人々の価値観を根本的に変化させると説明しています。

生存や安全が脅かされる発展途上の段階では、人々は集団の規範や権威に従うことを重視します。

そのため、社会の大多数が「伝統的な保守層」で占められ、価値観が統一されやすくなるため、数値上の分断は目立ちにくくなります。

しかし、国が豊かになり教育水準が上がると、生存の不安が解消されるため、個人の自律や選択の自由を求める「解放的価値観」——いわゆるリベラルな価値観を持つ人々が増加します。

その結果、高HDIの先進国においては、従来からの保守層と、新しく台頭したリベラル層の人口比が拮抗し、社会構造が「50対50」に近い状態になります。

つまり、先進国で見られる激しい政治的分極化は、「社会が発展し、異なる価値観を持つ勢力が、互角の力を持って対峙する構造になった結果」として生じる現象であると、研究からは示唆されるのです。

そして、その対立の火種となっているのが、経済的な利害よりも、中絶や同性愛といった個人のアイデンティティに関わる「文化的課題」であることも明らかになりました。

政治的分極化や分断は、好ましいことではありませんが、それはその国の国民が、健康や教育、所得といった様々な面で豊かになった証しなのかもしれません。

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政治の分極化は国の発展度合いが高いほど50:50になる (2/2)のコメント

ゲスト

対立と分断そのものは多分2008年よりも前から起きていたのだと思いますよ、そういうことっていきなり表に出てくるのではなくて、表に出てこない形でずっとくすぶっていたものがある時を境に一気に出てきますから。

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