何もしなくても脳の認知力は回復するのか?
休憩は認知能力の回復やパフォーマンスの向上にとって非常に重要です。
しかし休憩の仕方にはさまざまな種類があり、人によってはすぐに実践できないものがあります。
例えば、最近注目されている「森林浴」は近くに自然環境がないとできません。
また外に出て散歩したり、家でコーヒーを淹れるのも「若干、面倒くさいな」と感じる方もいるでしょう。
そこで研究チームは、誰でも今すぐに実践できる「何もしない5分間の休憩」で脳の回復効果が得られないかどうかを調べることにしました。
実験では72人の大学生に参加してもらい、まず学生の集中力や注意力を消耗させるために、スピード条件下(時間制限つき)での暗算テストを約20分間行いました。
そして学生たちを以下の3つのグループに分けます。
1つ目が「休憩なし」、2つ目が「森林を散歩する一人称視点のビデオを5分間見る」、3つ目が「何もせずに5分間を過ごす」です。
その後、学生たちには、2桁の数字の掛け算を暗算で行う方法(例:34×67)についての短いレッスンを受けてもらいました。
実験後には、このレッスン中にどの程度気が散っていたかに関するアンケートに答えてもらっています。
具体的には「レッスン以外のことに注意が向いていた」とか「短時間以上の集中を維持するのが難しいと感じた」などの質問です。
さらに最後に、学生には20問の問題解決テストを実施し、そのスコアやレッスンで学んだ暗算方法をどれだけ実践できたかを確認しました。
5分間何もしないだけで十分な休憩になる!
その結果、何もせずに5分間を過ごした学生は、休憩なしのグループに比べて、レッスン中の集中力や注意力が高いことが判明したのです。
さらにレッスン後の問題解決テストでも休憩なしのグループの平均スコアを上回っていました。
そして森林散歩のビデオを見たグループとは、同程度の注意・集中力とスコアの高さを記録しています。
(この2つのグループには有意な差がなかったとのことです)
以上の結果を踏まえて、5分間の何もしない休憩だけで疲れた脳の認知力を回復させ、その後のパフォーマンスを向上させることができると実証されました。
また自然のビデオをわざわざ用意しなくていいという点を加味すれば、最も効率のいい休憩法と言えるかもしれません。
教育心理学の専門家で研究主任のポール・ギンズ(Paul Ginns)氏は、このように述べています。
「問題解決や勉強には高い注意力や集中力を必要としますが、私たちの認知能力は無限ではなく、疲労によって認知リソースは枯渇してしまいます。
しかしその疲れた脳を回復させるには、コンピューターやデバイスから離れ、何もせず静かに5分間座っているだけで十分なのです」
外に出たり道具を用意する必要もないので、これなら誰でも気軽に実践できるでしょう。
そしてこの5分間はとにかく何もしないことです。
スマホでSNSをチェックしたり、ネットサーフィンをするのもよくありません。余計な認知ストレスがかかってしまい、逆に脳を疲れさせる可能性がありますから。
「邪念を捨てて、ただボケーッとする」これだけで良いようです。ただ、現代人にはこの休憩方法は逆に難しいのかもしれませんね。