「沈黙を聞く」実験をしてみよう
「ワン・イズ・モア錯覚(The One-is-More Illusion)」を用いた実験とはどういったものなのでしょう?
これは、一つの長いビープ音と同じ長さのピープ音を二つに分けて聞いたとき、前者のほうが長く感じられる現象です。(下の音声ファイルを42秒から再生するとこの錯覚を体験することができます)
チームは、このビープ音を「沈黙」に替えて実験することを思いつきました。
「沈黙でも同じ錯覚が生じるのなら、脳は沈黙を音情報と同じように知覚・処理していることになる」と考えたのです。
言葉で説明しても分かりづらいので、実際に体感してもらう方が早いかもしれません。
※ 以下の動画では錯覚実験に用いたものと同じ音声サンプルが視聴できます。
動画の内容は次のようなものです。
今あなたはレストランの席に座り、雑多な騒音の中にいます。
その途中で、2つの短い沈黙(48秒あたり)と1つの沈黙(55秒あたり)が発生します。
さて、どちらの沈黙が長く感じるでしょうか?
これを約1000人の被験者を対象に実験したところ、沈黙の長さは同じにも関わらず、ほとんどの人が「1つの沈黙の方がずっと長く感じられる」と答えたのです。
実際聞いてみると皆さんも同じ感想を抱くのではないでしょうか?
この結果は、科学者がこれまで音の知覚でのみ発生すると思われていた錯覚が、沈黙に置き換えても生じることを示します。
つまり、私たちの脳は沈黙を音情報と同じように知覚・処理していると考えられるのです。
この結果を受けて同チームのイアン・フィリップス(Ian Phillips)氏は「この錯覚は音の聴覚処理に特有のものでしたが、沈黙によっても同じ結果が得られたことから、私たちは音の欠如も実際に耳にしていることが分かりました」と述べています。

また研究者らは「今回の発見は(沈黙のような刺激の)不在の知覚を研究する新たな方法を確立した」と話します。
チームは今後、人が実際の日常的な環境下で沈黙をどの程度聞いているのか、より具体的に調査していくとのことです。
それから聴覚の不在に加えて、視覚情報の消失や人がいなくなった不在についてもどれほど知覚しているのかを調査したいと述べています。
ちなみに、ジョン・ケージが作曲した『4分33秒』の実演映像がこちらです。
あなたにも沈黙の音楽が聞こえますか?





























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