「龍涎香」はどうやって作られる?
龍涎香は英語で「アンバーグリス(Ambergris)」と呼び、”灰色の琥珀”を意味する古フランス語のambre gris(アンブル・グリ)に由来します。
アンバーグリスを作るのは絶滅危惧種に指定されているマッコウクジラのみです。
しかも全てのマッコウクジラから得られるのではなく、約100頭に1頭の割合でしかアンバーグリスは作られません。
こうした要因もアンバーグリスの希少価値を高めている理由の一つです。
さて、ハクジラ類の最大種であるマッコウクジラは普段、歯を使ってイカやコウイカを大量に食べています。
しかしそのほとんどは消化できずに吐き出されてしまいますが、一部が未消化のまま体内に残されます。
イカには硬いクチバシがあるため、これが塊になると柔らかな胃や腸を傷つけかねません。
そこでマッコウクジラは彼らに特有のワックス状物質を分泌し、未消化の塊を包み込みます。
そしてワックスに包まれた塊が排出されないと、腸管に沿って移動し、直腸を塞ぐように塊がどんどん溜まって結石化していきます。
これがいわゆる「アンバーグリス」です。
アンバーグリスは運がよければ便と共に排泄されますが、あまりに大きくなりすぎると腸を破って体外に飛び出します。
いずれにせよ、アンバーグリスを手に入れるには、海に漂っているものか浜辺に打ち上げられたものを見つけるしかないので、よく「海を漂う黄金(floating gold)」と称されます。
アンバーグリスの主な使い道は、高級香水などの香りを持続させるための保留剤です。
アンバーグリスはビャクダンのような甘い香木の香りを持つ一方で、アンブレインという芳香性物質も含んでいます。
これが香りを固定して長持ちさせたり、媚薬効果を生み出す働きをしているのです。
取引後のお金は何に使う?
絶滅危惧種のマッコウクジラの捕鯨は国際条約で禁止されていますが、アンバーグリスは動物の廃棄物とみなされているため、多くの国々で取引が合法となっています。
(アメリカ、オーストラリア、インドでは禁止されている)
カナリア諸島を含むEUでも合法であり、ロドリゲス氏らは現在、今回見つかったアンバーグリスの買い手を探しているとのことです。
ロドリゲス氏自身は「取引で得られた金額は、2021年にラ・パルマ島の火山噴火で被害を受けた住民の支援に使われることを願っている」と話しました。
ラ・パルマ島では2021年9月19日にクンブレ・ビエハ火山が噴火し、約5000人(総人口は約8万5000人)が被害を受け、被害総額は8億ユーロ(約1243億円)にのぼると推計されています。
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