死んでも皮膚で「見る」を間近で経験した研究者
釣り人であり生物学者でもあるロリアン・シュヴァイケルト氏は、釣り船の上で、異常な光景を目にしました。
シュヴァイケルト氏はブタウオと呼ばれる鼻がとがった魚を釣り、釣り船の甲板に投げ込みました。
魚釣りはときに連続で魚がかかる状況になるため、しばしば釣った魚を船の上に放置して、直ぐに次の獲物を狙うこともあるからです。
しかし、しばらくしてシュヴァイケルト氏が甲板の上に投げたブタウオをクーラーボックスに運ぼうと手を伸ばしたとき、彼女は奇妙なことに気が付きました。
上の写真のように、ブタウオの皮膚が船の甲板の色と同じ白色になっており、さらにこのカムフラージュは甲板の汚れすら反映していたのです。
サンゴ礁に生息するブタウオには、周囲の色を真似るカモフラージュ能力があることが知られていましたが、問題は、甲板の上にいたブタウオが既に死んでいた点にありました。
カモフラージュ能力は通常、動物たちが生き残るために使用されるので、死んだ魚には必要ありません。
驚いたシュヴァイケルト氏に、ここである予想がひらめきました。
それは「ブタウオは目や脳と関係なく皮膚だけを使って光を感知しているのではないだろうか?」というものでした。