アリに関する素朴な疑問 「お尻が大きい理由や家への侵入を防ぐ方法は?」
お尻が大きいのはなんで?
――あとアリに関する素朴な疑問でアリのお尻はなんであんな大きくて、他はキュッとしまった形になっているのかっていうのも気になってるんですが。
古藤:あのお尻って言ってる場所はお尻ではなくてお腹なんですが、アリのお腹の中にはすごく伸縮性があってハムスターのほっぺみたいに食べ物を溜めておける貯蔵袋のような部分があるんですね。
さっきも食べたものを溜めておいて仲間に分け与えるみたいな話しをしたと思いますが。彼らにとっての生きるモチベーションってやはり女王を助ける、社会を維持するってところにあるんですね。だから食べ物も自分の分だけ食べればいいものを、もうすごくお腹いっぱいに溜め込んで持って帰って仲間にわけようとするんですね。
――食事は仲間と分け合うことが前提の食べ方なんですね。どのくらいお腹に貯めこめるんですか?
古藤:そうですね砂糖水とか与えると本当にお腹がパンパンになるまで飲みます。なので色の付いた砂糖水を与えると、お腹が赤とか青とかに染まって水風船みたいになるので面白いですよ。
――これは自由研究をする子供にも、良さそうな情報ですね。簡単に試せそうですし、見た目が面白いので。
家に入ってきちゃうアリはなんなの?
――あと気になるのが、アリはどうやって食べ物を見つけてるんだってことですね。子供の頃、部屋においていた飴の缶に大量のアリが群がってトラウマになっちゃったなんて人の話をたまに聞くんですけど、どうしてそんな人間の家の中にある食べ物に気づいて大勢でやってくるんですか?
古藤:自然のアリの行動範囲って言うのは研究室で観察してる私にはわからないですけれど、ただ非常に広いのは確かなので、食べ物の発見っていうのはランダムに起きているんだと思います。彼らは実際はかなり臆病で、食べ物を見つけたからってすぐにがっついたりしないんですね。ちょっと食べてみたり持ち帰ってみて大丈夫だな、となると繰り返し取りに行ったりします。
――じゃあ見つけたあと大勢でやってくるっていうのは、やっぱり呼びに行ってるんですか? なんかフェロモンで道筋をつけて辿ってるっていうのも聞いたことありますけど。
古藤:アリは常に歩いた場所にフェロモンを付けているので、大丈夫なご馳走だとわかると、彼らは繰り返し同じ道を行き来して、その度にフェロモンの跡がどんどん濃くなってくるんです。そうなると他より濃い道筋ができる。それは辿っていけば当然なにか良いことがあると他の仲間にもわかるので、だんだん増えていくわけです。
――ああ、人間にもありますよね、知らない店だけど行列できてると美味しんだろうとか思って並んじゃうみたいな。それに近い感覚でだんだん集まっていくんですね。でも家の中に入ってこられると困るじゃないですか。アリのこういう家の侵入を防ぐ方法って研究者の方は何か知ってたりしますか?
古藤:それ実はすごくよく聞かれるんです。これは登ってほしくない壁や縁にベビーパウダーを塗っておくと効果があると言われています。
――ベビーパウダーですか?
古藤:私たちも二次元バーコード貼ったアリを観察する際は、邪魔になるので蓋を外してアリのケースを撮影したいんですね。でもそうすると当然アリは逃げちゃいます。そのときに壁に粉を振っておくと、アリたちは滑って登れなくなるんです。研究者はもう仕事なので専用の粉を使っていますが、一般の人では手に入れづらいものなので、これはベビーパウダーでも代用できるって言われてます。