人が感じるノスタルジーな気持ちは時代とともに変化しているようです
人が感じるノスタルジーな気持ちは時代とともに変化しているようです / Credit:canva
psychology

人は昔のことより最近の出来事を懐かしく感じていると判明

2023.09.05 Tuesday

「ノスタルジー」とは、過去の経験や思い出などを振り返り、温かみや懐かしさを感じる気持ちのことを指します。

そんなノスタルジーという感情は、どれくらい昔の思い出に発生するのでしょうか?

今回、オーストラリアのウーロンゴン大学(UOW)のチャールズ・S・アレニ博士ら研究チームは、YouTubeにアップロードされた幅広い年代のミュージックビデオのコメントを分析し、人々が何十年も前の古いコンテンツよりも、比較的新しい時代のコンテンツに対してのほうが懐かしさを感じていることを発見しました。

これは高齢の人でも「美空ひばりより、初期のAKB48の方が懐かしく感じる」と言えるかもしれません。

今回の研究の詳細は、2023年8月8日付で『Wiley Online Library』に掲載されています。

Scientific analysis of YouTube comments reveals new insights into the psychology of nostalgia https://www.psypost.org/2023/09/scientific-analysis-of-youtube-comments-reveals-new-insights-into-the-psychology-of-nostalgia-168563
How long ago were the “good old days”? Comparing the prevalence of nostalgia in YouTube comments on music videos from recent versus distant decades https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/acp.4121

You Tubeのコメントから人の感じる懐かしさを分析

今回の研究はYou Tubeのコメントを分析し人々の感じる懐かしさを測定した
今回の研究はYou Tubeのコメントを分析し人々の感じる懐かしさを測定した / Credit:canva

誰しも、特定の場所、音楽、香りなどによって、ノスタルジーをな気持ちが引き起こされたことがあるのではないでしょうか。

今回、アレニ博士ら研究チームは、そんなノスタルジーな感情が、遠い過去のコンテンツに発生しやすいのか、それとも最近の時代のコンテンツにも同様に発生するのかについて調査しました。

この研究の特長は、実験やアンケートによる研究とは異なり、人々が普段の生活で、どのようにノスタルジーを感じて表現しているのかを直接観察している点です。これにより、人々が実生活で感じているノスタルジーをより正確に理解することが期待できるのです。

ノスタルジーは、歳を重ねると自然に人々が感じるものだと昔から思われてきました。

また、1960年代の初期の研究からは、60歳以上の人々が自分の人生を振り返り、その意味や価値を考える「ライフレビュー」をする傾向があることがわかっています。

高齢者は自分の人生が充実していたと感じたいため、ノスタルジーを通じて過去の経験をより良く思い出すことがあるのです。

人が最もノスタルジーを感じるのは、「レミニセンス・バンプ(回想バンプ)」と呼ばれる、15歳から30歳の間の記憶と言われており、現在の年齢に関わらず、多くの人がこの時期の自分の人生を振り返ります。

つまり、60歳以上の人がYouTubeを利用する場合、多くアクセスする過去のコンテンツは、おそらく1960年代から1980年代にかけてのものと考えられます。

しかし、アレニ博士によると、2000年代以降の動画に関して、ノスタルジーを感じる人が増えているようです。

これはフェイスブックなどのソーシャルメディアの普及により、最近の思い出を振り返ることが多くなったためです。

次ページ56本の動画からノスタルジーに関連する言及を調査

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