ワイドレシーバーってどんなポジション?背番号のルールとは
名作漫画『アイシールド21』の愛読者なら、アメリカンフットボールのルールやポジションについてある程度理解されているでしょうが、それ以外の方にはあまり馴染みのないスポーツかもしれません。
特に本研究の主役であるワイドレシーバーというポジションも「何じゃそりゃ?」という人は多いはずです。
アメフトは基本的にオフェンス専門の11人とディフェンス専門の11人が攻守ごとに入れ替わるシステムであり、ワイドレシーバー(WR)はオフェンス陣における空中戦の花形ポジションです。
またフィールドを駆け抜けてロングパスをキャッチする俊足が必要なため、チーム1のスピードスターでもあります。
それからポジションによって使用できる背番号に制限があり、アメフトの最高峰NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)では、ワイドレシーバーは1〜49番と80〜89番の間のどれかを付けることができます。
(実は以前までWRは80〜89番のみでしたが、2004年に1〜49番もOKになりました)
そして2019年のESPN調べで、NFLのワイドレシーバーの80%近くが10〜19番を背番号に選んでいたことが判明し、選手たちは理由として「スリムでスピーディーに見えるから」と答えていたわけです。
本当に小さな背番号は見た目をスリムに見せていた!
今回、UCLAの心理学者で研究主任のラダン・シャムズ(Ladan Shams)氏は、その選手たちの心理が科学的に正しいかどうかを2つの実験で検証しました。
1つ目の実験では、37人のボランティアを対象に、人種・体格・ユニフォームの色・背番号がさまざまに異なるアメフト選手のCG画像を提示します。
1人の同じ選手につき、背番号が10〜19番(数字が小さい)と80〜89番(数字が大きい)の2通りの画像を作りますが、被験者にはランダムな順番で提示し、各選手の体格について評価してもらいました。
その結果、人種・体格・ユニフォームの色の違いに関係なく、同じ選手は数字の小さい背番号(10〜19番)のときに体格がよりスリムで、数字の大きい背番号(80〜89番)のときにより大柄に見えると評価されたのです。
2つ目の実験では、ボランティアの数を147人に増やして、同様の実験をしました。
ただし今回は「数字の8や9が1よりも占有面積が広いために、体まで大きく見せているのではないか」という疑問に答えています。
具体的には、同じ選手につき17と71・18と81・19と91のように、同じ数字を使いながら順序を反転させた2通りの画像を用意しました。
これでユニフォームにおける数字の占有面積を同じにしながら、純粋に数の大小によって心理効果が生じているかを検証できます。
その結果、占有面積に関係なく、背番号が小さいとき(17〜19)の方が大きいとき(71〜91)よりも選手の体が細身に見えると評価されたのです。
これにより、被験者による体のサイズ知覚は純粋に数字の大小の影響を受けていることが示されました。
この結果についてチームは、これまでの人生で経験されてきた数字と物の大きさの関係性が、体のサイズ知覚にも適用されている可能性があると述べています。
例えば、スーパーの商品袋に記載されたグラム数にせよ、ジムのダンベルに刻まれたキロ数にせよ、私たちは生活の中で「数字が大きいほどサイズや重さが大きくなる」ことを認識し、一つの規則性として自然と記憶しています。
そのルールを無意識のうちにアメフト選手の体格にも当てはめているのかもしれません。
となると、この心理作用は私たちの日常生活でも起こりうるのではないでしょうか?
例えば、小さな数字の印字された服を着るとスリムに見え、大きな数字の入った服を着るとガタイがよく見えたりするのかもしれません。
あるいは名前で考えますと、一郎さんより五郎さんの方が何となく体格が良さそうな感じがしませんか。
その辺りもぜひ研究で実験してもらいたいところです。