ヨーロッパアカガエルのメスは望まない交尾相手を死んだふりによって回避するようです
ヨーロッパアカガエルのメスは望まない交尾相手を死んだふりによって回避するようです / Credit:canva
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望まぬ相手と交尾したくないがために「死んだふり」をするメスガエル (2/2)

2023.10.14 Saturday

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メスが交尾を避ける3つの戦略

ディトリッヒ氏ら研究チームは、繁殖期に池からヨーロッパアカガエルのオスとメスを集めて水槽に分け、それぞれの水槽にメス2匹とオス1匹を入れて観察しました。

すると、オスに掴まれた54匹のメスのうち83%が仰向けに転がったのです。この体を仰向けに回転させる技がメスが編み出した1つ目の戦略です。

先ほど、アカガエルのメスはオスに掴まれると振りほどくのが難しいという話をしましたが、そこに関連するのがヨーロッパアカガエルのオスの手にある婚姻瘤と呼ばれるコブの存在です。これが交尾の際にメスにしっかりと抱きついて離れにくくします。

そのためメスは振り解くことが難しいオスを追い払うために、仰向けになってオスを水中に押し込みます。するとオスは溺れるのを避けるため、仕方なくメスから手を放して交尾を諦めるのです。

そして、研究チームはオスにマウンティングされたメスの約半数が、うなり声や鳴き声を発していることも発見しました。これが2つ目の戦略と考えられます。

ディトリッヒ氏によると「このうなり声は、『リリース・コール』と呼ばれるオスが他のオスからマウンティングされないように発する声を真似たものだ」と言います。

カエルは鳴き声が特徴的ですが、その声にはさまざまな意味があります。メスは仰向けに転がる際、このうなり声を出すことから、オスを避ける目的で使っている可能性が考えられます。

さらに研究チームは、3分の1のメスがオスにマウンティングされた後、約2分間手足を伸ばしたまま動かないことを発見しました。これが3つ目の戦略です。

ディトリッヒ氏は、「それが意識的な行動なのか証明できませんが、メスが死んだふりをしているように見える」と述べています。ただし、これはストレスに対する自動的な反応という可能性も指摘されています。

交尾したがるオスの前に死んだふりをするメスの様子が確認できます
交尾したがるオスの前に死んだふりをするメスの様子が確認できます / Credit:Carolin Dittrich Yu et al., Royal Society Open Science / ナゾロジー編集部

さらに、これら3つの戦略を使うメスは年齢によって偏りがありました。

今回の研究対象となったメスたちの中でも、若いと思われる小型のメスは3つの戦略すべてを使う個体が多く、高齢と思われる大型のメスでは少なかったのです。

結果、戦略を多用する小型のメスは、大型のメスよりもオスの誘惑から逃れるのが上手でした。

なお、若いメスは繁殖期が短いため、オスにマウンティングされた時にストレスを感じ、より強く反応するのかもしれないとも指摘されています。

全体としては、オスにマウンティングされたメスの46%が脱出に成功しました。

交尾行動の理解は保護活動に役立つ可能性がある

実験では水槽の中にメス2匹とオス1匹という現実ではあまり考えられない環境であったため、実際の行動とは異なる点があるかもしれませんが、こうした戦略は野生でも見られるとディトリッヒ氏は語っています。

望まないオスから交尾を逃れるための戦略として死を装うことは、ヨーロッパアカガエルだけでなく、トンボやクモ、そして両生類ではイベリアトゲイモリなど、数は少ないですが他の動物でも記録されています。

このような交尾行動を理解することは、将来、絶滅の危機に瀕している種を繁殖させようとする場合、保護活動の支援に役立つ可能性がある、とディトリッヒ氏は指摘しています。

ヨーロッパアカガエルは一般的なカエルですが、過去17年間、雨不足と干ばつのために個体数が確実に減少しています。

望まない交尾によって死んでしまっては元も子もありせんので、死んだふりを含むヨーロッパアカガエルのメスたちが編み出した戦略は、この種全体が生き残るために生み出された手段なのかもしれません。

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