宇宙全体はブラックホールを示す禁止領域に接している
図をよくみると、地球や太陽の属する直線(赤色で囲った部分)に比べて、銀河や大規模構造(青色で囲った部分)は、サイズが大きくなるにつれて、より禁止領域に近づいていくことがわかるでしょう。
今回の研究では銀河や宇宙の大規模構造を図に記すだけでなく、宇宙最大の物体、すなわち宇宙全体(緑色で囲った部分)についても、そのサイズと重さの概算が行われ、図に記載されました。
(※宇宙のサイズについてはハッブル体積が使用されました)
すると驚くべきことに、宇宙全体を示すポイント(緑色で囲った部分)が、ブラックホールを意味する禁止領域の線上に位置することが判明しました。
論文において研究者たちは「これは宇宙全体がブラックホールであることを示唆しているようだ」と述べています。
ただこの結論は、膨張を続ける「宇宙の外側」が内側と同じ性質を持っているという前提で導き出されたものである点について、注意を促しています。
宇宙の外側を観測する方法が存在しない以上、理論を実証する方法は存在せず、最終的な結論とはみなせません。
ただ宇宙の素とされたインスタントンと、現時点の全宇宙がともに禁止領域の線上に接しているという結果は、非常に興味深いと言えるでしょう。
物理学の世界には、全ての物質を単一の表にまとめて記載するという、長年にわたって採用されてきた伝統が存在します。
ごく簡単に作るならば、単に一番小さな粒子を左側に、宇宙全体を右側に配置すれば可能です。
実際、科学雑誌の特集などで、素粒子から宇宙の大規模構造に至るまでを記した解説図を目にしたこともあるでしょう。
しかし今回の研究は、原子の世界と重力の世界、そして小さな粒子の世界が異なる直線状に配置されていることを示すと共に、禁止領域も表示するより包括的なものになっています。
そのため研究者たちは、この図を使うことで物理学の限界にかんする問題を理解する助けになると述べています。
特に禁止領域がかかわる部分については、問題の明確化に役立ちます。
2つの禁止領域がインスタントンで交差する事実をどのように解釈すべきか?
インスタントンは本当に宇宙の素なのか?
もしこの疑問に答えられるならば、人類の宇宙に対する理解は、大きく前進するでしょう。